岩田剛典、高畑充希、前田敦子、仲野太賀……“大人”の俳優だからこそハマった高校生役

『町田くんの世界』アラサー俳優がハマった理由

 石井裕也監督の最新作『町田くんの世界』は、安藤ゆき原作のマンガを実写化。主人公の町田くん(細田佳央太)と猪原さん(関水渚)をオーディションで選び、岩田剛典、高畑充希、前田敦子、仲野太賀などアラサーの人気俳優が高校生役を演じたことも話題だ。

 町田くんは全人類を愛することができる博愛主義者。勉強も運動も苦手だけど、妹や弟の面倒を見て、家族のために家事をこなし、困っている人がいたら放っておけない。そんな町田くんが人嫌いの猪原さんと保健室で2人きりになり、彼女のことがなぜかどうしても放っておけなくなる。誰のことも愛せるし、誰からも愛される町田くんが自分の中の特別な「好き」という感情の変化に気づいたとき、周りのみんなを巻き込んで大変なことが起こる。

 自分の恋愛感情に戸惑うピュアでいい人すぎる町田くんと繊細な猪原さんの初々しいやりとりがこんなにも際立つのは、何といっても彼らを見守り、ときにその不器用さに呆れる“リアル”な高校生を演じる豪華俳優陣の存在があってこそ。町田くんと猪原さんのまっさらで何ものにも染まっていない初々しさと対照的に、現代を生きる高校生という存在を軽やかに演じていた岩田剛典、高畑充希、前田敦子、仲野太賀の魅力を改めて実感する作品となった。

 岩田剛典×高畑充希

 本作で高嶋さくらを演じた高畑充希のインスタグラムにアップされた制服姿の岩田剛典とのツーショット。「共に植物を集めていた時はまさか制服で再会するとは思っておりませんでした。笑」とあるが、映画『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』の主演2人が制服姿で共演するとは誰も想像していなかったはず。雑草を愛し、季節を感じながら、ほんわかとした恋愛を育んでいた2人のキャラクターを反転させたようで、今回の役柄はそれぞれのイメージを逆手にとった意外性もまた面白い。

 ひたむきで愛情表現がストレートすぎて、ちょっと重いタイプのさくらと、学校の人気者で人からの評価を何よりも気にするゆえ、自分と向き合えない氷室雄(岩田)の揺れ動く心情。実体験として青春を経験し、キラキラなラブストーリーを完璧に演じることができる2人だからこそ見せられる青春の残酷さや、痛み。『植物図鑑』とは全く別の表情、高校生らしい姿は必見だ。

仲野太賀

 そして、高校生の西野亮太を演じるにあたり、美肌効果を信じて1カ月間豆乳を飲んだという太賀。全身全霊を傾ける勢いで猪原さんに告白して彼女を本気で困らせてしまうところは切ないが、その一生懸命さは町田くんの心をも動かすほどだ。緩急自在な演技で笑いのツボを刺激し、町田くんの善人ぶりに感動して屈託なく感謝する素朴さも心をくすぐられる。

 笑わせておいて泣かせるという芝居には高度なテクニックだけでなく、天性の勘のようなものも必要とされるが、太賀はそのどちらも持ち合わせている。映画5本に出演した2018年に続き、本作のハマり役も彼にとって手応えを感じ、自信につながるものだったに違いない。そして、6月24日に、「仲野太賀」として活動していくことを発表。「仲野太賀」として、NHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』第二部の出演も決定しており、また新しい一面を見せてくれそうだ。

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