『アントマン&ワスプ』の格闘シーンは変幻自在でリズミカル! 4DX版の見どころ解説

『アントマン&ワスプ』4DX版見どころ解説

 映画と連動して座席が揺れ、風が吹き、水滴が飛ぶ……いわゆる4DX 。この4DXが今、凄くイイ感じに盛り上がってきている。この原稿を書いている時点でも『ジュラシック・ワールド/炎の王国』(18年)、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(18年)、『劇場版コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命–』(18年)、『HiGH&LOW THE MOVIE』(16年)と、4DX対応作品がいくつも公開中だ(ここに2年前の傑作『HiGH&LOW』が入っているのは注目すべき事態だと思うが、その話を始めると長くなるので今回は流させて頂きたい)。そんな中でつい先日、封切られたのが『アントマン&ワスプ』(18年)である。結論から言おう。私は『アントマン&ワスプ』と4DXの相性は抜群だと思った。

  『アントマン&ワスプ』は、今やすっかり日本でも人気が定着したマーベル映画最新作だ。凄腕の泥棒だが間が抜けていて、それでいて根が正義感な好漢スコット・ラング(ポール・ラッド)は、ある盗みで天才科学者ハンク・ピム(マイケル・ダグラス)と出会う。スコットの能力を評価したピム博士は、彼に一瞬でアリのサイズまで小さくなることができる特殊スーツを使い、スーパーヒーロー“アントマン”になるように持ち掛ける。スコットは泥棒家業から足を洗うため、何より娘に誇れる立派な父となるため、ピム博士の娘で文武両道の完璧超人ホープ(エヴァンジェリン・リリー)に師事。特訓の末に、スーパーヒーローとして難事件を解決するのだった。やがて “アベンジャーズ”の両巨頭アイアンマンとキャプテン・アメリカが対立すると、アントマンはキャプテン側に参戦。最終的には逮捕されてしまい、2年の外出禁止令を受ける。前作『アントマン』(15年)と『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16年)のあらすじは、ざっとこんなところだろうか。

 そんなわけで本作は、アントマンが外出禁止状態で物語が始まる。なかなかヘビーな状況であるが、そこはマーベル・ヒーローの中でも屈指の「ダメだけど気のいいアンちゃん」感がある男。犯した罪への反省や後悔といった沈痛なテンションではなく、娘と楽しく遊ぶシーンから映画は始まり、観客を「ああ、こいつら相変わらずだ」と安心させてくれる。その後も1作目同様に魅力的なキャラクターとアクションでグイグイ観客を引っ張ってゆく(マイケル・ペーニャも相変わらず絶好調!)。特にアクション面については確実に前作以上だ。そして、この点が本作と4DXとの相性を高めている。

 アントマンのアクションは格闘戦が中心だ。映画の格闘アクションは基本的に振り付けを決めて行うもの、ある意味でダンスに近い(稀に本気で戦う映画もあるが)。そのためか、優れた格闘シーンはテンポがよいのだ。マーベル映画は『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14年)あたりから格闘シーンのレベルが高まっており、本作の格闘シーンにも中々に力が入っている。このため4DXでは打撃が一発決まる毎に、心地よい振動が座席に走る。その感覚は肩、背中、腰をテンポよく叩かれるようだ。また、格闘以外でもカーチェイスのシーンは白眉と言えるだろう。決戦の舞台はカーチェイスの名所・サンフランシスコ。何故に名所かと言えば、例の坂があるからだ。例の坂とは、あのハリウッド・アクションでよく見かける路面電車が走り、車が弾みがちな「あの坂」のことである。その例の坂を車が疾走&ドリフトし、スキージャンプの如く跳び、クラッシュする。4DXでは、その「揺れ」を文字通り体感できるのだ。その臨場感は、ほとんどジェットコースターだと言っていい。

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