綾野剛の“ドスの利いた声と表情”が強烈な印象を残す 『ハゲタカ』怒涛の第1部が完結

綾野剛主演『ハゲタカ』怒涛の第1部が完結

 『ハゲタカ』(テレビ朝日系)が、8月2日放送の第3話で第1部完結を迎えた。

 第1部で描かれたのは、1997~2001年代の鷲津政彦(綾野剛)率いる外資系投資ファンド、ホライズンジャパン・パートナーズと、飯島亮介(小林薫)が常務取締役を務める三葉銀行の戦い。企業を食い荒らす“ハゲタカ”鷲津が三葉銀行を狙うのには、真の目的があった。


 それは、この国を腐らせてきた三葉銀行を潰すこと。鷲津の父・花井淳平(小木茂光)は、繊維会社・ワープジャパンの社長で、大蔵省本館にて割腹自殺した。三葉銀行の隠し口座の存在を知り、探りを入れたことで飯島にハメられ、全てを失ったのだった。第3話のキーアイテムとして登場するテープレコーダーの声を証拠に、鷲津は飯島に揺さぶりをかける。三葉銀行の隠し口座の実態、マネーロンダリング、顧客データの全てをニューヨークのジャーナリストに転送。明日の新聞一面に載ることを鷲津から宣告された飯島は、「日本を売る気か! この売国奴!」と叫ぶ。ここで鷲津の追撃が再開し、「死ぬこと以外、かすり傷だ!」「売国奴で結構!」「あんたをさらして、この国の経済を腐らせてきた三葉銀行を潰せたんだ!」「ハーゲーターカー! 冥利に尽きますよ!」と捲し立て、飯島を根負けさせる。そしてまた、右目から綺麗に頬を伝い流れ落ちる鷲津の涙は、復讐なんてものを果たしても決して戻ってくることのない、生きるべきだった父親への虚しい思いを示している。


 『ハゲタカ』がスタートして3週目となるが、鷲津のドスの利いた声はクライマックスシーンに向けた分かりやすいスイッチとして機能している。第1話で鬼怒川の老舗料亭・金色庵の社長である金田(六角精児)に言い放った「我々をハゲタカと呼ぶなら自分が食い荒らされる腐った肉だってことを自覚しろ」、第2話で太陽ベッドの社長・中森瑞恵(かたせ梨乃)相手に写真をばら撒きながら叫んだ「社宅の寝室のベッドはフランス製だ!」。これまで、鷲津はその台詞と声色で確実に鮮烈なインパクトを残してきた。外資系ファンドをテーマにした『ハゲタカ』は、「バルクセール」「ゴールデンパラシュート」「MBO(経営陣買収)」など、テロップでの解説が必須な専門用語が会話の中で多数使用される。過去に『西郷どん』(NHK総合)にジョン万次郎(劇団ひとり)が登場した際、英語、薩摩弁、土佐弁が入り乱れた事態に、“字幕必須”だと話題になったが、個人的には『ハゲタカ』も“字幕推奨”のドラマだと思っている。気を抜くと物語に置いていかれそうな状況になった際でも、鷲津のスイッチが入れば不思議と納得する、見やすい演出、構成に仕上がっている。『半沢直樹』『小さな巨人』などTBS系日曜劇場にも通じる、大胆なカメラワークや正面アップを多用した画力も、視聴者を飽きさせない工夫に繋がっている。

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