沢村一樹の不穏な表情は何を意味する? 単なる勧善懲悪ドラマにならない『絶対零度』

勧善懲悪ドラマにはならない『絶対零度』

 沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満らキャスト陣の絶妙なアンサンブルで始まった『絶対零度~未然犯罪潜入捜査~』(フジテレビ系)。7月16日に放送された第2話は、“正義”とは何か突きつけると同時に、主人公・井沢範人(沢村一樹)の抱え持つ“闇”が垣間見えた回となった。

 “未来の犯罪を予測して捜査する”チーム、通称“ミハン”は料理人の藤井早紀(黒谷友香)を新たな危険人物として指定する。2mgで男性を殺害できるという強力な毒・リシンを海外から仕入れていたからだ。さらに弁護士に遺言状の作成も依頼済み。財政界にも人気の創作料理店を営み、子供たちにも無料で食事を提供する「こども食堂」の運営にも関わるなど、“成功”を収めた早紀が、自らの命を投げ売ってでも、殺害したい人物とは誰なのか、というのが第2話のあらすじである。

 家族や恋人など、自分が愛している者に何かがあったとき、その原因となった加害者を憎むことは誰にでも起こりえることであろう。しかし、法治国家である日本ではどんなに辛い被害にあったとしても、被害者、あるいは被害者家族が自ら加害者に裁きを下すことはできない。だからこそ、未解決事件を生み出さないこと、そして起きうる事件を未然に防ぐことが警察に求められるものであり、さらなる悲劇を生み出さないために必要なことである。

 早紀の復讐のターゲットは、最高裁判所長官を退任し、政治家へ転向した小松原忠司。小松原は最高裁判所長官という自らの権力を利用し、早紀の娘・七海を助けることができたにも関わらず、自身の保身のため見殺しにしていた。それだけでなく、罪を同時期に起きていた女子高生連続殺人事件の容疑者になすりつける形で処理していたのだった。

 ミハンの面々は早紀の復讐を防ぐために行動する自分たちに疑問を投げかける。「俺たちが守るのはクズ」「いっそ復讐をさせてあげたほうが世のため…」と。しかし、早紀が復讐を遂げたところで、それを喜んでくれる人物は誰もいない。命を落とした実の娘も、そんなことを望んではいない。結局、早紀は井沢らの手によって捕獲され、小松原に裁きは下されなかった。痛烈に泣き叫び、悲痛な面持ちで復讐を遂げようとする早紀を演じた黒谷の表情は胸にささるものがあったが、それ以上に視聴者を揺さぶったのがこの後に起きる展開だ。

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