『セラヴィ!』はフランス版三谷幸喜作品? “絶対にハズさない”娯楽映画の方法論

“絶対にハズさない”『セラヴィ!』の魅力

 その誰も傷つけないソフトな語り口を崩すことなく、人種差別や不法移民といった現代のフランス社会が抱える問題にもコミットしていた『最強のふたり』や『サンバ』と違って、今回の『セラヴィ!』ではそうした社会的なテーマは前景化していない(物語の背景としては描かれているが)。エリック・トレダノによれば、それは「2015年にパリ同時多発テロが起き、僕たちは気持ちが沈んでいて、純粋に騒いで楽しめる雰囲気の作品を作りたい、という欲求に駆られたんだ」とのことだが、そもそも彼らの作風に相応しいのはこういうタイプの作品なのではないか。結婚披露宴が舞台の群像劇というと、ロバート・アルトマンの『ウエディング』(1978年)を思い起こす人もいるかもしれないが、良くも悪くもあの作品のようなエキセントリシティとはまったく無縁。練られた脚本と、平易なストーリーテリングと、安心の大団円。まるでフランス版三谷幸喜作品のような敷居の低さと間口の広さが本作の魅力だ。

『セラヴィ!』予告編

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」「文春オンライン」「Yahoo!」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。Twitter

■公開情報
『セラヴィ!』
7月6日(金)渋谷・シネクイントほか全国公開
監督:エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
出演:ジャン=ピエール・バクリ、ジル・ルルーシュ、ジャン=ポール・ルーヴ、ヴァンサン・マケーニュ
配給:パルコ
2017年/フランス/117分/原題:『Le Sens de la fete』/英題:『C’EST LA VIE!』
(c)2017 QUAD+TEN / GAUMONT / TF1 FILMS PRODUCTION / PANACHE PRODUCTIONS / LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE
(c)Bernard RIE Photographies
公式サイト:cestlavie-movie.jp

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