生田斗真、『友罪』で“特徴のない役”をどう演じた? 瑛太と交わす距離感と目線に注目

生田斗真が挑む“特徴のない役”

 作者・ 薬丸岳本人すら「発表するとき、喜びよりも先に恐れを抱いた」と語る小説が原作となった映画『友罪』が5月25日に公開された。

 『友罪』は、人の心の闇に迫っていくヒューマンサスペンスで、2人の男の出会いから物語は始まる。とある町工場で働き始めた元週刊誌ジャーナリストの益田純一と、人との関わりを避ける鈴木秀人。2人の間には、同じ寮で暮らすうちに少しずつ友情が芽生えていく。そんな中2人が住む街の近くで、子供の殺人事件が起こった。この事件は17年前に当時14歳だった少年Aが起こした凶悪事件と類似しているとされ、今回も既に出所している少年Aの犯行ではないかと囁かれた。

 ネット上に拡散された少年Aの写真を見て、益田は愕然。少年Aは鈴木にそっくりだったのだ。調査を始める益田だったが、実は自分自身も17年前にとある罪を犯し、今でも心に闇を抱えていた。鈴木と向き合いながらも、益田は自分自身の心の闇も見つめていく。複雑な人間の心理描写、1997年に実際に起きた事件を彷彿させるストーリー設定、「友人が凶悪事件の犯人だったらどうするか?」というテーマなど、ストーリーを楽しみつつも様々なことを考えさせられる映画である。

 そして主人公・益田を演じたのは生田斗真。益田は、ジャーナリストとして働いていたものの、夢破れて町工場で見習いをする青年。口数は決して多い方ではないが、人並みに周りと交流をしながら日々を過ごしている。益田の人物像として印象的だったのは、元ジャーナリストならではの正義感と「自分の気持ちをはっきりと口にしない」ところだ。言ってしまえば、大きな特徴がない人物とも言える。例えば、瑛太演じる鈴木は、表情からもセリフからも掴みどころのない“謎の人物感”が全面に出ていた。しかし、そういった特徴がないのが益田である。生田も、益田を演じる上で苦労をしたのではないだろうか。

 だが、実際作品を観ると生田の演技は流石であった。決してセリフが多いわけでもなく、コロコロ表情が変わるわけでもない益田の感情・心情を、生田は「空気」と「間」で表現していたと思う。例えば、鈴木の間にある友情の表現。鈴木は益田に向かって「友達だから」という言葉を言っているが、益田は「俺たちって友達だよな」と確認するようなことは言っていない。

 一見すると、鈴木だけが益田に友情を感じていると取れなくもないのだ。だが、2人の関係性が確実に深まっていると感じられるポイントがある。それは、距離感と目線だ。物語が進むに連れ、徐々に2人の物理的距離は近づき、お互い目も合うようになっていく。これこそが、お互いに心を許した証拠ではないだろうか。そして生田は、距離のとり方や目線の交わし方などを巧みに操っているのだ。

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