映画『恋は雨上がりのように』はなぜ説得力がある? 小松菜奈や大泉洋による再現度を考察

『恋は雨上がりのように』なぜ説得力がある?

 さらに“恋雨”は、もともと青年コミック誌の連載マンガというともあり、少女マンガ的な展開がそれほど描かれていない。もちろん、あきらの17歳ならではの恋愛は眩しく輝いているが、そんな彼女が恋をする相手は、しがないファミレスの店長。少女マンガでフィーチャーされる年上男性といえば、大人の魅力や色気たっぷりのキャラクターが多い中、近藤は、本当にそこらへんにいそうな中年男性。飾るわけでも、色気があるわけでも、お金があるわけでもない。だが、だからこそ女子高生の純粋な思いが胸に響くのだ。

 そして近藤も、あきらから猛プッシュを受けるだけの存在ではない。あまりにエネルギッシュな少女に戸惑いながらも、45歳という人生の折り返し地点に立つ近藤が取り戻すのは、忘れかけていた“あの頃の自分”。数々の笑いとともに、ふんわりと芽生えるその感覚は、きっと幅広い年齢層の心をくすぐることだろう。

 原作とテレビアニメでエンディングが異なることが話題となった『恋は雨上がりのように』だが、映画の結末もまた、それとは異なる。ネタバレとなってしまうため詳細は控えるが、晴れ渡る空を見上げ、新しい風を思いっ切り吸い込みたい。そんな気持ちにさせてくれる、爽やかな良作だった。

■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。5歳・7歳の息子を持つ2児の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter

■公開情報
『恋は雨上がりのように』
全国東宝系にてロードショー
出演:小松菜奈、大泉洋、清野菜名、磯村勇斗、葉山奨之、松本穂香、山本舞香、濱田マリ、 戸次重幸、吉田羊
原作:眉月じゅん『恋は雨上がりのように』(小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載)
監督:永井 聡
脚本:坂口理子
音楽:伊藤ゴロー
参加アーティスト:の子/mono(神聖かまってちゃん)、柴田隆浩(忘れらんねえよ)、澤部渡(スカート)
主題歌:「フロントメモリー」鈴木瑛美子×亀田誠治(ワーナーミュージック・ジャパン)(C)2018映画「恋は雨上がりのように」製作委員会 (C)2014 眉月じゅん/小学館
公式サイト:http://koiame-movie.com/

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