『THIS IS US 36歳、これから』は、山田太一、坂元裕二作品に通じる? 巧みな脚本を分析

『THIS IS US』巧みな脚本を分析

これは“わたしたち”の物語

(c)2016-2017 NBCUniversal Media, LLC. All rights reserved.

 経済的な格差、あるいは世代の違い、果ては男女やセクシャリティをめぐる対立に至るまで、トランプ政権下のアメリカのみならず、ここ日本でも現在、さまざまなレイヤーにおける“対立”が顕在化しているように思う。その状況を目の前にしたとき、我々は果たして、どんな態度をとるべきなのだろうか。ネットで見かけた“誰か”の意見に与しながら、別の“誰か”を叩けば良いのか。違うだろう。その果てにあるのは“断絶”でしかない。むしろ、その“違い”を認めながら、それでも相手に歩み寄り、彼/彼女のことを理解しようとすべきなのではないだろうか。

 このドラマに登場する彼/彼女たちは、その“違い”を前にして、ただ呆然とするのではなく、いわんや敵意をむき出しにして相手を否定し排除することもなく、それぞれが精いっぱいのやり方で歩み寄り、お互いのことを理解しようとする。そう、『THIS IS US 36歳、これから』というドラマは、観る者すべてを含む“わたしたち”の物語なのだ。

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 本国アメリカの人々はもちろん、我々日本人にとっても、いま最も欠けているものであり、最も求められているもの。それは、誰かの受け売りではなく、あくまでも“個人”対“個人”の状況で、とことんまで腹を割って話し合い、相手を理解しようと努めることなのではないのか。それを、このドラマは誰よりも地に足の着いたやり方で、そっと感動的に提示してみせるのだ。本作が、アメリカはもちろん、ここ日本で高い支持を得ている理由も、実はそのあたりにあるのかもしれない。このドラマを観た者は、誰しもがこう思うに違いないから。そう、これは“わたしたち”の物語なのだと。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/旅人/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twtter

■放送情報
『THIS IS US 36歳、これから』(全18話)
海外ドラマ専門チャンネルAXNにて、全18話を一挙放送!
5月3日(木・祝)~6日(日)連日12:00スタート
※第1話~3話はスカパー!無料放送
詳しい視聴方法はこちらをご覧ください 

また、字幕版を日本初放送!
字幕版:5月12日(土)22:00スタート
二カ国語版:5月13日(日)23:00スタート

企画・脚本・製作総指揮:ダン・フォーゲルマン
出演:マイロ・ヴィンティミリア、マンディ・ムーア、ジャスティン・ハートリー、クリッシー・メッツ、スターリング・K・ブラウン、スーザン・ケレチ・ワトソン
(c)2016-2017 NBCUniversal Media, LLC. All rights reserved.
公式サイト:https://www.axn.co.jp/programs/this_is_us

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