早くも動員目標15万人達成にリーチ! 異例づくしの『クソ野郎と美しき世界』

異例づくしの『クソ野郎と美しき世界』

 先週末の動員ランキングで、『リメンバー・ミー』、『ボス・ベイビー』、『映画ドラえもん のび太の宝島』の「春の3強」(先週土曜日の時点で『のび太の宝島』は累計動員428万人を突破して、『ドラえもん』シリーズ最高動員記録を更新)に割って入ったのは、初登場3位の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。土日2日間の動員19万2000人、興興収2億7300万円という数字は、日本でも子供人気に火がついたことで観客層が若い『ボス・ベイビー』を興収では上回って週末2位の成績。日本の配給会社がソーシャル・メディアで仕掛けたハッシュタグ「#マジジュマンジ」も、この手の企画にしては珍しく「当たり企画」となっていて、22年前のオリジナル作同様、海外と比べて日本では今一つ浸透度の低い同作の認知拡散に成功している。

 今週注目したいのは、8位に初登場した元SMAPの稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾が主演したオムニバス作品『クソ野郎と美しき世界』。4月6日金曜日から全国86スクリーンで2週間限定公開されている同作は、公開3日間で8万7528人、4月10日までの5日間で11万2504人を動員。女性客の入場料が割引となる水曜日(レディースデイ)の4月11日には、デイリーランキングでトップ3に食い込むほどの健闘を見せている。

 6日に行われた公開初日の舞台挨拶で「目標動員15万人」という数字が発表された『クソ野郎と美しき世界』。このペースだとかなり早い段階で目標動員を達成する見込みだが、そもそもこのように製作者サイドがここまで具体的かつ現実的な数字を掲げるのは異例のこと。公開館や公開期間が限定されていることも含め、興行的な観点からすると、とにかく『クソ野郎と美しき世界』は異例づくしの作品なのだ。

 実は『クソ野郎と美しき世界』は、事前にマスコミ向けの試写もおこなわなかった。そのような作品には、これまでいくつかのケースがある。

 一つ目は、作品が完成するのが公開前ギリギリで、公開までに試写を回す時間がないというケース。国内のアニメ作品などで稀にあって、予定されていた試写が直前で中止になるようなこともある。二つ目は、戦略的に試写を回さないというケース。制作・製作・共同配給がカラーになってからの『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズがそれにあたり、同じ庵野秀明が総監督を務めた2016年の『シン・ゴジラ』も東宝配給作品としては異例なことにごく一部の関係者試写しかおこなわれなかった。三つ目は、世界同時公開の大作などで、海外の配給元から試写が禁じられているケース。ディズニーになってからの『スター・ウォーズ』シリーズがこれにあたる。四つ目は、作品の仕上がりに自信を持てず、公開前に悪評が広まるのを危惧して、製作サイドや配給サイドがあえて試写を回さないケース。近年も、実際に国内ホラー映画作品などにあった。五つ目は、ファンしか観ないような極端なファンムービーであることから、批評が興行に影響しないと判断されて、同じく製作サイドや配給サイドがあえて試写を回さないケース。最後に、単純に試写会をやる宣伝予算がないケース。

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