「動機だってどうだっていい」 法医学を描いた『アンナチュラル』が別格なドラマになった理由

『アンナチュラル』が別格な作品になった理由

 “法医学”という分野を語る上で避けては通れない名著である、上野正彦先生の『死体は語る』(文春文庫)の中に書かれている通り、法医学者がわかることは「死因」だけだ。その死因にたどり着くまでのプロセスと“漠然とした死”の奥にあったドラマは、“生”を奪われた人間とともに“生”を分かち合っていた者たちが描かれて初めて露見されるものなのである。

 あらためて、“死”というものは“生”の先にあるものなのだから、それを描くのならば“生”を奪われた人間だけを見つめ続けなくてはならないだろう。法医学を題材にしたドラマというのはこれまでも何度もあったが、いずれも“死”にばかり固執し、“生”を見失ってきたのかもしれない。『アンナチュラル』は“死”をフックにして浮き彫りになる“生”にこだわった、いたってナチュラルなドラマだったのかもしれない。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
金曜ドラマ『アンナチュラル』
出演:石原さとみ、井浦新、窪田正孝、市川実日子、池田鉄洋、竜星涼、小笠原海(超特急)、飯尾和樹(ずん)、北村有起哉、大倉孝二、薬師丸ひろ子(特別出演)、松重豊ほか
脚本:野木亜紀子
プロデューサー:新井順子(ドリマックス・テレビジョン)、植田博樹
演出:塚原あゆ子(ドリマックス・テレビジョン)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/unnatural2018/

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