号泣から挙動不審まで ピカイチな表情を連発する『海月姫』芳根京子の巧さ

『海月姫』芳根京子、ピカイチな表情を連発

 そんな全体的にしおらしいムードのエピソードだからこそ、月海を演じる芳根京子の演技のコントラストはより一層明確化する。序盤は天水館が売られるという不安と、修に連絡が取れない不安に駆られ、血相を変えながら鯉淵家を訪ねる月海。カイ・フィッシュの誘いを受けてからの彼女は、より一層おとなしさが増していくのだ。

 しかしながら、軟禁されているホテルに蔵之介が訪ねてくるシーンでの彼女だけは、これまでのこのドラマのテイストを徹底的に死守。まさにピカイチとも言える表情を連発するのだ。大量にルームサービスを注文している蔵之介に慌てふためく挙動不審な動きから、“尼〜ず”の仲間たちを思い出して込み上げてくる感情を無理やり抑えながら「嘘ではありません」と、作り笑いまで。

 感情の転換をスムーズに行い、ナイーブな感情を露わにする場面とネガティブな感情が一切ないハイテンションさを切り替えて行く彼女が、風呂場で倒れた蔵之介を助けるときにメガネを外す瞬間の表情はまさにピーク。その後のラブストーリーの進展をうかがわせる場面と、ラストの号泣と比較すればなおさらに、ホテルの一室での彼女の喜劇演技は輝きを増している。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『海月姫』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00放送
出演:芳根京子、瀬戸康史、工藤阿須加、ほか
原作:東村アキコ『海月姫』(講談社『Kiss』所載)
脚本:徳永友一
編成企画:渡辺恒也
プロデュース:小林宙
演出:石川淳一
制作:フジテレビ/共同テレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kuragehime/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる