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宇野維正の興行ランキング一刀両断!

初登場5位、今週末から93スクリーンに拡大 『さよ朝』ヒットの重要性について

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 先週の本コラム(『グレイテスト・ショーマン』圧勝で初登場1位 日本人はアメリカ人よりミュージカル映画好き?)でも予測したように、公開2週目に入った『グレイテスト・ショーマン』が驚異的に高い水準の推移で2週連続1位となった先週末の動員ランキング。土日2日間で動員24万4000人、興収3億6400万円という数字は、動員で先週比91%、興収で先週比93%という記録。日本でヒットするミュージカル映画特有の傾向を示していて、完全にロングヒットのゾーンへと入った。

 今週注目したいのは、76スクリーンという小規模公開ながら、土日2日間で動員3万2000人、興収4800万円を記録して初登場5位にランクインした『さよならの朝に約束の花をかざろう』。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』などのヒット・アニメ映画の脚本を手掛けてきた岡田麿里によるオリジナル長編アニメーション映画。ちなみに岡田麿里は昨年公開されて大コケした実写版『心が叫びたがってるんだ。』には関わっていないが、同年にいずれも興行的には奮わなかった『暗黒女子』、『先生! 、、、好きになってもいいですか?』と2本の原作もの(前者は小説、後者はコミック)実写映画の脚本を手掛けていた。今作『さよならの朝に約束の花をかざろう』は古巣のアニメ作品に回帰、しかも脚本だけでなく監督業にも進出した勝負作だった。

 結果としては、当初の76スクリーンというのは少々見込み違いの、高いヒット・ポテンシャルをもった作品であることを証明してみせた(今週末から93スクリーンに拡大される)。作品の内容も、これまでの『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』といった舞台設定やキャラクター設定においてはリアリズムに準じていたオリジナル作品とは大きくテイストが異なる、寓話/ファンタジー的な要素が強いスケールの大きなもの。その上で、女性の監督ならではの視点や細やかな感情の機微やメッセージ性も込められていて、有力な監督といえば男性ばかりだった日本のアニメ映画界における、新たな才能の誕生に興奮せずにはいられない見事な出来栄えとなっている。

 「監督の資質を性差で語るべきではない」というのも一つの正論ではあるが、現実として、近年の海外の映画界では、女性監督の比率の不均衡が重要なトピックとして盛んに語られるようになっている。日本における監督男女比の正確な統計はないが、少女コミックの実写化作品を40代どころか50代60代の男性監督が中心となって量産しているといういびつな慣習が蔓延している。それでも優れた作品が次々と生まれているならこんなことはわざわざ指摘はしたくはないが、そこに日本映画界の根深い問題が潜んでいるとしか思えないのが現状だ。

      

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