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松山ケンイチ、作品を形作る表情の豊かさ 『隣の家族は青く見える』大器役の変化を読む

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 コーポラティブハウスに住む4組のカップル・家族が抱える悩みが露見していく『隣の家族は青く見える』。2月8日放送の第4話では、“人工授精”、“同性愛”が物語の主軸となり、考えさせられる回だった。

 今回注目したいのは、松山ケンイチ演じる五十嵐大器である。このドラマはコメディタッチだが、テーマは現代社会が抱える課題そのものであり、観ている人に問題提起するような内容ばかりだ。そんな中、松山は楽観的で憎めない、子供が大好きな夫を演じている。

 第4話は、不妊治療に励む大器と奈々(深田恭子)が、次のステップである人工授精に進もうとするところから始まる。奈々は「子供がほしい」という思いから人工授精に進むことに前向きだ。しかし大器は人工受精に対するイメージから、少し違和感を覚え気が進まない。このときの松山の表情が良い。釈然としないモノが心の内にあるが、納得も説得もできないときの表情だ。同じ状態のとき、私の夫も同じ表情をするので驚いた。決して無表情ではない。彼なりに相手を気遣っている顔だ。でも自分が釈然としていないことをどう伝えるべきか考えている、あの表情はとてもリアルだった。

 第4話で、奈々の母親(原日出子)が初めて登場する。奈々は、不妊治療をしていること、人工授精に進むつもりだということを母親に伝えるが、彼女は人工授精どころか不妊治療に反対だった。その様子を玄関先で聞いていた大器は、母と娘の会話に割って入る。このときの空元気っぷりは見事なものである。外で話を聞いていたことがバレバレに思えるので、思わず笑ってしまった。しかし、大器自身も人工授精には抵抗があったはずだ。奈々の母親と同意見にも関わらず、彼は奈々に寄り添う形を取ったということだろう。

 大器が、ただ単に悪い空気が漂うのが苦手な人だということも、松山はセリフがない間の細かい演技で見せてくれる。けれどもそこで空元気な演技をするだけでは、ただの空気が読めない人だ。松山が大器の心情を視聴者にわかりやすく演じることで、彼がどれだけ奈々を大事にしているかが伝わる。松山の演技によって、大器の底抜けない明るさが違和感なく見れるのだ。

 人工授精には後ろ向きだが、子供がほしいのは大器も同じだ。そんな折、妹・琴音(伊藤沙莉)に呼びだされた大器は、琴音から愚痴を聞かされる。それは琴音の夫である啓太(前原滉)が自然分娩しか認めないという話だった。「なんでも自然にこだわるのはどうかと思う」と不満を漏らす琴音だが、大器は何か思い当たる節があるような顔をする。「俺もその考え方にこだわっているんじゃないか」そんなモノローグを連想させる表情を松山は見せる。その表情が映し出されている中、大器が注文していた飲み物「オーガニックグリーン」がなんだか皮肉でもある。

 そんな松山の演技に変化が生じ始めるのが、コーポラティブハウスを設計した広瀬渉(眞島秀和)と青木朔(北村匠海)が同性愛者だということが住人にバレた時だ。「子供に同性愛のことをどう伝えればいい」と怒りを露わにする小宮山深雪(真飛聖)に対し、渉は謝罪をする。しかし奈々は、

「堂々と暮らせる人とそうじゃない人がいるなんておかしいです」
「人は誰だって、自分が望む幸せを手に入れようとする権利があるんです」

 と2人の間に割って入るのだ。この時、松山の顔が映される。奈々の前にいないときにだけする、思い詰めた顔だ。

 深雪が渉と朔の関係について問いただし始めた時には、その空気の悪さをなんとか変えようとクッキーを頬張り「美味しいですね」と渉に声をかけていた大器。しかし奈々の発言を聞いている間は、まるで自分が深雪の立場に立っているかのようだ。大器は、奈々の発言を自分こそ聞かなければならないと思っているのだろう。人工授精も同性愛も、知らないから不自然に感じるだけだ。だからまずは知ろうとするべきなんじゃないか。奈々の発言とほんの少しの間だけ映しだされる大器の思い詰めた表情で、視聴者は訴えかけられたに違いない。

      
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