悲劇と見せかけた喜劇のラスト 『RAW~少女のめざめ~』が描く強烈すぎる愛への渇望

『RAW』悲劇と見せかけた喜劇のラスト

 そしてその彼女の止まらない衝動を受け入れる役割として存在する人物が、エキセントリックな姉・アレックス(エラ・ルンプフ)と、ゲイのルームメイト・アドリアン(ラバ・ナイト・ウフェラ)だ。2人は、過激な出来事の多い寮生活においてジュスティーヌを導いたり相談相手になったりする存在だ。彼らは予測不能な行動をとるジュスティーヌの異変を戸惑いながらも受け入れ、彼女が社会に順応できる方法を見つけようとする。その度を越えた「受け止める」という愛は、姉妹愛とも恋愛とも形容することのできない、そもそも愛なのかもわからない何かだ。だが、大島渚監督の『愛のコリーダ』における、藤竜也演じる吉蔵が、次第に松田瑛子演じる阿部定の衝動を受け入れるだけの存在になっていくことを愛だと言うのなら、彼らもまた止められないジュスティーヌの衝動を受け入れることで愛を示しているのだと言えるだろう。

 それぞれ青色と黄色のペンキを全身にかけられた男女が絡み合う場面がある。青と黄が交われば緑になるという卑猥なゲームなのであるが、予想に反して違う色を纏い2人は外に出ることになる。この映画のラストもそうだ。全く予想しない終焉。それはある意味全てが繋がる感動と衝撃のラストでもあるが、悲劇と見せかけた喜劇のラストのようにも思える。あなたはこの映画を何色だと思うのか。

 怖いもの見たさでもいい。観たら必ず誰かとこの映画を共有したくてたまらなくなるに違いない。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■公開情報
『RAW〜少女のめざめ〜』
全国公開中
監督・脚本:ジュリア・デュクルノー
出演:ギャランス・マリリエ、エラ・ルンプフ、ラバ・ナイト・ウフェラ
ユニバーサル映画
配給:パルコ
原題:『GRAVE』/英題『RAW』/2016年/フランス・ベルギー/98分/カラー/音声:5.1ch/R15
(c)2016 Petit Film, ouge International, FraKas Productions. ALL IGH E E VED
公式サイト:raw-movie.jp

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