『FINAL CUT』は今の現実社会とつながっている? 藤木直人の演技などから考察

『FINAL CUT』は現実社会とつながっている?

 あるときは、著名な歌手が亡くなり、番組冒頭のVTRまでの時間稼ぎのために、生放送で彼女の持ち歌であった「愛の賛歌」を突然歌いだす。一見すると臭い演出に見えるかもしれないが、このタイプのドラマには、ちょうどいいくらいに映る。個人的には、実際に報道番組MCを務めるような男性の局アナや元局アナには、なにかタレントや俳優やお笑い芸人とは微妙に異なる、特殊なナルシシズムや自意識があるように思うため(もちろん、人前に出る人々がそうした部分を持っているのは当然である)、むしろ藤木の演技は、“リアルには見えないリアリティ”なのではと思えた。

 藤木演じるMC以外にも、慶介が働く警察の上司を演じる佐々木蔵之介もなんらかの事情を抱えていそうな空気を出しているし、事件の真相をにぎる男の姉妹(栗山千明、橋本環奈)とも慶介は近づいているから、そこも見どころになっていくだろう。

 このドラマは、完全にフィクションとして現実とは離して観るべき種類の作品だ。だが、正義感や使命感を持っているような顔をしながら、部数や視聴率主義で他人の秘密を単に暴いているだけのマスコミの姿は、デフォルメはしているが今の現実社会とつながっているようにも見える。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
『FINAL CUT』
毎週火曜21:00~21:54(カンテレ・フジテレビ系全国ネット)
出演:亀梨和也、藤木直人、栗山千明、橋本環奈、林遣都、高木雄也(Hey! Say! JUMP)、やついいちろう、杉本哲太、裕木奈江、鶴見辰吾、升毅、水野美紀、佐々木蔵之介
脚本:金子ありさ
音楽:菅野祐悟
演出:三宅喜重(カンテレ)、日暮謙
プロデューサー:豊福陽子(カンテレ)
制作著作:カンテレ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/finalcut/index.html

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