松下優也が語る、“他力本願”の演技論 「『アシガール』成之役では引き出していただいてばかり」

松下優也が語る、“他力本願”の演技論

■「お芝居でしか出せない自分がある」

『アシガール』提供=NHK

――松下さんは中学生の頃からずっと音楽の勉強をしていますよね。なぜ、役者としても活動しようと?

松下:デビューしたのは18歳なのですが、実はデビュー前に映画のお話を頂いて、そこで初めてお芝居をさせていただきました。あまり大きな役ではなかったのですが、その頃は訳もわからずに、ただ全力でやっていましたね。そのあとに初主演かつ初舞台のお話をいただいて、その舞台でお芝居を年一回のペースでやらせていただくことになりました。もともと表現することが好きなので、徐々にお芝居の仕事が増えていくのと同時に、その面白さに気付いていきました。正直それまで、僕には歌と踊りがあったので、それ以外の方法で表現するなんてことは考えてもいなかったのですが、お芝居をやっていくうちに、ダンスや音楽では表現できない部分、お芝居でしか出せない自分があることに気づきました。音楽、ダンス、芝居それぞれに違う楽しさがあるので、今でも全部やらせていただいています。ただ時期によっては、音楽に傾いたり、お芝居に集中したりと、多少バラつきはあるのですが。

――お芝居でしか出せない自分とは、どのような部分なのでしょうか?

松下:僕にとって音楽は、“いかに自分の中にあるものを発信していくか”という側面が大きいのですが、お芝居は真逆なんですよね。お芝居は“自分じゃない誰かになれる”ということが、一番大きいと思います。自分のこうしたいという願望よりも、周りの方たちとの調和を大切にする感覚です。僕もその役になるべく寄っていきたいという想いがあるので、言い方は悪いですが、どこか他力本願なところがあります。お芝居は、内にあるものを発するのではなく、周りから引き出していただくことが多いです。

――『アシガール』でも、どなたかに引き出してもらっている部分はあるのでしょうか?

松下:引き出していただいてばかりです。台本を読んでセリフを覚えて、ある程度自分の中でイメージを固めてから現場に入っても、実際は想像していた立ち位置と全く違ったり、ほかの役者さんが思ってもいなかった動きをしたりすることも多いので。だから、セリフを覚える時点で、ここはこの場所でこういう風に言おうなどと、ガッチリ決めてしまうと、それに縛られすぎて、臨機応変に対応できなくなってしまいます。周りの雰囲気によって、僕も変化していくという意味で、他力本願なんですよ。あらかじめ自分が考えておいて貫き通すのは、この場面での成之の気持ちはどうか、という部分だけですね。

僕はあまり、監督や共演者に対して、僕はこう思います! とは言いたくないんです。たとえ役のことを想っていたとしても、それは僕個人の考えでしかないから。自分の思考に固執するのではなく、周りの意見に耳を傾けることで、僕自身も作品自体もより可能性が広がっていくのではないかと思っています。自分的には納得できないことでも、見方によっては正しいこともあるので、そこは頭を固くしたくないなと。でも正直なところ、僕は役者としてまだまだ未熟なので、周りの方たちに頼りたいと思っている部分もあるのかもしれません。

――周りの考えを受け入れる柔軟性が大切だと。松下さん自身の主張は最小限に抑え、流れに身を委ねているのですね。

松下:実際にお芝居をしていると、案外そっちの方が面白いんですよ。特に映像では。舞台は冒頭から結末まで、大抵は予想通りに進んでいきます。僕のお芝居に対して、その場で照明が当たり、音楽が流れ出し、お客さんからリアルな反応も返ってくる。舞台はリアルタイムで結果が出ますが、映像は完成して世に送り出されるまで、僕たち出演者もどう仕上がっているのかわかりません。撮影したシーンを、その都度モニターでチェックはしますが、まだ音も入っていない状態なので。すべてが繋がった完成品を観た時に初めて、狙いすぎても意味のないことがわかったり、自分が気付いていなかったよさを引き出していただいている部分があったり、逆にもっとこうやっておけばよかったと反省するシーンがあったりと、その場では見えなかったものが浮かび上がってくるんですよね。そのドキドキ感がたまらないです。

――最後に、松下さんは中学3年生の頃にソウルミュージックにみせられて、単身でニューヨークを訪問していますが、いずれ音楽でも役者でも海外に出たいという気持ちはあるのでしょうか?

松下:そうですね。実際に僕の音楽を、海外でも聴いてくださっている方がたくさんいらっしゃるので、嬉しいと思うと同時に面白いなと。今の時代だからこそなのか、僕が行ったことのない国でも、僕らの音楽を知っていただけていることにワクワクします。なぜか僕、タイですごく人気があるらしいんですよ。多分これまでに、アニメの主題歌などをやらせていただく機会が多かったからだとは思うのですが、それでも不思議やなと。活動の拠点が日本だけとは、特に自分自身も考えていないので、可能であれば世界にも進出していきたいなと思っています。それはもちろん、音楽やダンスに限らず、お芝居でも。

(取材・文・写真=戸塚安友奈)

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■放送情報
土曜時代ドラマ『アシガール』
NHK総合にて、毎週土曜よる6時5分から6時43分<連続12回予定>
出演:黒島結菜、健太郎、松下優也、ともさかりえ、川栄李奈、石黒賢、イッセー尾形 ほか
原作:森本梢子
脚本:宮村優子
音楽:冬野ユミ
演出:中島由貴、伊勢田雅也、鹿島悠(NHKエンタープライズ)
制作統括:内田ゆき(NHKエンタープライズ)、土屋勝裕(NHK)
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/ashigirl/

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※当選の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
※複数のお申し込みが発覚した場合、ご応募は無効とさせていただく場合がございます。

<応募締切>
12月24日(日)

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