『明日の約束』完成度高いシナリオに見る、関西テレビの方向性 課題はエンタメ性か?

『明日の約束』脚本の魅力を読む

 脚本は古家和尚。火曜9時枠では、『幽かな彼女』や『ON 異常犯罪捜査官・藤堂比奈子』などを手がけている常連だ。一度、疑いだすと登場人物全員が怪しい奴に見えてくる展開は、『LIAR GAME』(フジテレビ系)を書いた古家らしい脚本だと言えるだろう。

 手塚理美と仲間由紀恵が演じる毒親を筆頭に、各キャラクターの味付けは若干濃い目になっているが、ストーリーの進め方は真面目なトーンで作られているので、じっくり楽しむことができる。

 しかし、人間の暗部を描き出そうという文芸性にドラマが寄っているためか、気軽に楽しむには敷居の高いムードが作品を覆ってしまっている。視聴率の面で苦戦しているのはそのためだろう。

 元々、カンテレ(関西テレビ)制作のドラマは、ハードなテーマを扱っていても、エンターテインメントに徹していた。草なぎ剛主演の『銭の戦争』と『嘘の戦争』がその筆頭で、この二作は陰惨な場面が多くても、ピカレスクヒーローものとしてのカタルシスがあったことが人気の秘訣だった。そんな、安心して楽しめる娯楽性こそが、カンテレ制作のドラマが、苦境にあえぐフジテレビのドラマの中で孤軍奮闘できていた勝因だったのだが、今年の『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』、『僕たちがやりました』そしてこの『明日の約束』は、作品の完成度と引き換えにわかりやすいカタルシスが減って重苦しいムードが出てしまい、敷居が上がってしまったように思う。

 個人的にはこの三作の方向性は支持したいのだが、できればカンテレらしい敷居の低い娯楽性も死守してほしい。しかし、このバランスを取るのは、中々難しいものである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『明日の約束』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:井上真央、及川光博、工藤阿須加、白洲迅、新川優愛、羽場裕一、手塚理美、仲間由紀恵
演出:土方政人、小林義則
脚本:古家和尚
プロデューサー:河西秀幸、山崎淳子
制作著作:関西テレビ放送
制作協力:共同テレビ
(c)関西テレビ
公式サイト:https://www.ktv.jp/yakusoku/index.html

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