石井裕也監督が語る、変わりゆく東京「オリンピック前の最後の風景や気分を撮れた」

石井裕也監督インタビュー

 「最後の風景や気分みたいなものを撮れた」

――その他に、特典映像としてメイキングのドキュメンタリーも収録されていますが、やはり今回の現場は、いつもの現場とは違いましたか?

石井:違います、違います。やっぱり、演技経験のないまっさらな新人がひとりいたっていうのは、今回が初めてでしたし……しかも、主役のひとりですから。それこそ、今まで通用してきた言葉が通用しない。俺の言葉が届かない(笑)。

――とはいえ、その甲斐あって、石橋さんは、先日の東京国際映画祭で「ジェムストーン賞」を獲ったのをはじめ、今後年度末にかけて各賞にエントリーされています。それは監督として嬉しいというか、「やった!」みたいな気持ちがあるのでは?

石井:うーん、「やった!」はないですね(笑)。賞を獲るだろうなっていうのは思っていたので。当然評価されますよね。だって彼女は、他の人には真似できない芝居をやっていますから。それを芝居と言っていいのかわからないですけど、新人にしかできないことをやっている。もちろん、その演技力云々で天秤にかけられたら、他の方々に完敗ですけど、そういうキャリアのある方々ができないことを彼女はやっているわけです。ただし、その先を考えたときに、今回と同じことはできないわけですから、「石橋さん、次は同じことできないけど、がんばってね」って感じです(笑)。

――ちなみに、今回の映画は、石井監督のなかで、どんな意味や意義を持つ作品になりましたか?

石井:やらなきゃいけなかった映画って感じがするんですよね。撮ったのは16年ですけど、あのときの気分みたいなもの、それは僕だけじゃなくて、あのとき街に流れていた気分みたいなものを撮らなくてはいけなかった。僕の個人的な狙いというか、自分の感覚を取り戻すとか、そういうのはもちろんありますけど。ロケ地になった渋谷も、どんどん変わっていて、宮下公園も、今はほとんど無くなってるじゃないですか。

――たった1年のあいだで、次々と新しい工事が始まっていて。

石井:これからオリンピックに向けて、あのあたりをガンガン変えようと言ってますもんね。だから今後、2020年に向けて、もっとひっちゃかめっちゃかになっていくと思いますけど。で、2020年以降はもっと大変な時代になることは、なんとなくみんな予想している。それに向けた、最後の風景や気分みたいなものを撮れたというのは、何かひとつ価値があったなとは思います。

――では最後に、石井監督の今後についても聞いていいですか。前回の取材では、「大きな映画をやるべきだ」と言っていましたが。

石井:それは引き続き思っています。それと同時に、やっぱり海外、特に東アジアはかなり意識しています。願望としてずっとあったんですけど、ここへ来て、かなり具体的に動かないといけないなと。

――それは、本作を持って海外を回って感じた手応えも関係している?

石井:今回の映画で掴んだというよりは、3年ぐらい前からずっと考えていたことではあって。だから、大きい映画作らなきゃいけないっていうのはちょっと別の意味で、「その一方で」っていう感じですかね。いずれにせよ、このままじゃまずいというか、あと6年で僕は40歳になるんですけど、それまでにもう少し頑張っておかないとまずいなと。それは相変わらず思っています。

(取材・文=麦倉正樹)

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発売/販売元:ポニーキャニオン

監督・脚本:石井裕也
原作:最果タヒ(リトルモア刊「夜空はいつでも最高密度の青色だ」)
出演:石橋静河、池松壮亮、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、市川実日子、松田龍平、田中哲司
エンディング曲:The Mirraz「NEW WORLD」
製作:テレビ東京、東京テアトル、ポニーキャニオン、朝日新聞社、リトルモア
配給:東京テアトル、リトルモア
(c)2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会
公式サイト:http://www.yozora-movie.com/

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