『監獄のお姫さま』クドカン脚本の特徴とは? 物語の鍵は“キャラクターの中毒性”にあり

『監獄のお姫さま』クドカン脚本の特徴

 さらに、そんな欠点がある人物が、目的のために懸命に挑んだり、もがいたりする姿は、滑稽でもあり、センチメンタルでもある。この笑いとセンチメンタルが融合されたキャラクターのバランス感覚も宮藤の特徴かつ魅力の一つだろう。作品によってこのさじ加減は変わってくる。『監獄のお姫さま』は、センチメンタル度がやや高い気がするが、個人的には、9もしくは8の笑いと1もしくは2のセンチメンタルという図式が非常に心地良い。

 キャラクター造形のほかに、もう一つ注目したいのは、出演俳優の崩しだ。本作でも、小泉は、出だしから息子に「老けたね」と言われると、その後も「おばさん」を連発される。すでに小泉の秀逸なコメディエンヌぶりは他作品でも実証済みだが、やはり見ていて爽快感がある。さかのぼれば『木更津キャッツアイ』の薬師丸ひろ子(美礼先生役)や、『僕の魔法使い』(日本テレビ系)の井川遥(劇中でも井川遥役)、『タイガー&ドラゴン』(TBS系)の伊東美咲(メグミ役)や蒼井優(リサ役)なども、それまでのイメージからは想像できないような崩され方をしている。

 現在、第6話まで放送され、それぞれのキャラクターのバックボーンも描かれてきており、今後、ますます躍動しそうな予感がある。また、物語が進んでいくなかで、改めてもう一度最初から見直すと、キャラクターの見え方が大きく変わるのも宮藤脚本の大きな魅力の一つだ。そんな見方も楽しんでもらいたい。 

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■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。

■番組情報
火曜ドラマ『監獄のお姫さま』
TBS系にて毎週火曜22時〜
脚本:宮藤官九郎
プロデューサー:金子文紀、宮崎真佐子
演出:金子文紀ほか
出演:小泉今日子、満島ひかり、伊勢谷友介、夏帆、塚本高史、猫背椿、池田成志、坂井真紀、森下愛子、菅野美穂
主題歌:安室奈美恵「Showtime」
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/pripri-TBS/

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