阿部サダヲ演じる家康は理想の上司ナンバー1 『おんな城主 直虎』菅田将暉との絶妙な掛け合い

 阿部サダヲ演じる家康の笑う場面は、本当に人が良さそうで嬉しそうで、こちらまで嬉しくなる。いつも意表をつく方法を繰り出してくる直虎や万千代に、面白いものを見つけたといわんばかりにその笑顔は向けられていた。「潰れた家の子」という謗りにもめげず、手柄を得るという野心ゆえに人の倍頑張ろうと、健気にもほどがある行動を取り、家康に認められて思わず涙する万千代に対し、「いっそまこと色小姓としてしまう手もあるかの」とどこまで本気なのかわからないことを口にする家康。思わず後ずさりする万千代と、これからどんな関係性を築いていくのだろうか。

 政次(高橋一生)の死後、しばらく見る回数が減っていた、このドラマにおいて重要な意味を持つ「囲碁」がまた多く登場し始めた。直虎と家康は人を大事にする政や、無駄な戦さをできるだけ避けようとするところなど重なることが多いが、大事な局面で常に囲碁を打っているということも重要な共通点である。ただ、直虎は常に政次とのみ囲碁をし、1人で囲碁を打つ時も政次を想定して行っていたため、政次の死後は混乱していた時期を除いて、囲碁を打つ場面はない。それに対し、家康は時折瀬名(菜々緒)に妨害されながらも、これまで常に1人で囲碁を打っていた。寝所に招かれ、目の前に敷かれた布団にドキマギしている万千代の目にはその布団と大福を頬張る家康の表情しか目に入っていないだろうが、その奥には囲碁盤がある。この先、万千代と家康が囲碁を興じ、共に戦略を練る時がくるのだろうか。楽しみである。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿

■放送情報
『おんな城主 直虎』
[NHK総合]毎週日曜20:00〜20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00〜18:45
作:森下佳子
出演:柴咲コウ、菅田将暉、小林薫、市原隼人、貫地谷しほり、井之脇海、阿部サダヲ、菜々緒、尾美としのり、高嶋政宏、和田正人、古舘寛治、尾上松也、市川海老蔵、柳楽優弥
制作統括:岡本幸江
プロデューサー:松川博敬
演出:渡辺一貴、福井充広、藤並英樹
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/naotora/

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