『コウノドリ』子育て世代から支持されるワケ 妊娠・出産の“リアリティ”に共感

『コウノドリ』で描く母親のリアリティ

 そんな時に支えになるのは、やはり夫の存在。耳の聞こえない早見夫婦が幸せそうに退院していく姿も微笑ましかったが、第2話に登場した子宮頸部腺がんを患う久保佐和子(土村芳)に発した夫・慎吾(福士誠治)の「2人で育てるんだよ」という言葉への、世の母親たちからの支持は圧倒的だった。


 妊娠19週の佐和子は、がんの治療開始を遅らせ、何週まで胎児を育てるか悩みに悩んでいた。そして、障がいなどが残ることを懸念し、自分の命を犠牲にしてでもできる限り長く赤ちゃんをお腹の中で育てたいと夫に告げる。そんな佐和子に伝えたのが「2人で育てるんだよ。俺たちの子だよ。3人の人生だよ」というセリフだった。この言葉を機に佐和子は在胎28週での出産を決意。物語の終盤には、母になった佐和子の予後が良好であることを心から喜ぶ姿が映し出された。

 筆者は30週での出産だったが、それでも佐和子の母子手帳の病歴には見たこともない病名がズラリと並んでいた。視力が弱いかもしれない、脳内出血が起こるかもしれない、発達障害があるかもしれない。手足は大人の親指よりも細く、男性の手のひらですっぽりと隠れてしまうほど小さなベビーには様々な試練が待ち受けているだろうが、共に支え合う久保夫婦なら現実を受け入れ、乗り越えていけるように思う。


 出産シーン、さらには出産前後の母の気持ちまでもリアルに映し出した『コウノドリ』は、ただ泣けるだけでなく、私たちに命の奇跡を教えてくれる希有なドラマ。今夜放送の第3話では、無痛分娩と、産後うつに陥った彩加のその後が描かれる。できればリアルタイムで夫と一緒に観たいが、恐らくその時間に夫はまだ帰宅していないだろう…。幸いにも早産だった息子は元気に成長したが、これが育児中である筆者のリアルであり、そんな状況に置かれている母親はきっと大勢いるはずだ。

■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。5歳・7歳の息子を持つ2児の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter

■放送情報
金曜ドラマ『コウノドリ』
TBS系にて10月13日(金)スタート 毎週金曜22:00〜放送
(初回15分拡大スペシャル)
原作:鈴ノ木ユウ「コウノドリ」(講談社「モーニング」連載中)
出演:綾野剛、松岡茉優、吉田羊、坂口健太郎、清野菜名、浅野和之、江口のりこ、星野源、大森南朋、佐々木蔵之介、古畑星夏ほか
プロデューサー:峠田浩
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/kounodori/

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