声優・河西健吾×岡本信彦『3月のライオン』対談 「二海堂は岡本くんのイメージとはかけ離れていた」

河西健吾×岡本信彦『3月のライオン』対談

河西健吾「石田彰さんをとても尊敬しています」 

ーー桐山のナレーションが多いのは本作の特徴ですよね。

河西:アニメーションって人によって見方が違うと思うんですけど、僕はその世界観に没入するのではなく、あくまで第三者としてテレビを観ているという感覚です。特にナレーションに関して、観ている最中に、「今なんて言った?」とか余計なことは考えさせたくないんです。だから、なるべく聞き取りやすい話し方や聞きやすい言葉で伝えることを心がけています。リアルタイムで観ている方は巻き戻しができないので、「え?」「ん?」ってなったままどんどん流れていっちゃうじゃないですか。僕はそんな風に作品を観せたくはないなと思っています。

ーー岡本さんも原作を意識して二海堂役を?

岡本:表現の仕方に悩んだ時は、僕も原作を読み返します。原作の世界観がとても好きですし、アニメーションの随所から原作の空気感を大事にしているのも伝わってくるので、それを邪魔しないように、流れに身を任せるようなイメージで挑んでいますね。一方で二海堂は、そんな空気をぶち壊せる存在でもあると思うので、そこをうまく表現できたらなと。第二シリーズはまたちょっと変わってくるんですけどね……。僕個人としては二海堂に対して、ナチュラルな作品の中にいるデフォルメ感満載のキャラクターっていうイメージがあるんですが、二海堂メインのドラマが描かれるときだけは、物語に自然に溶け込んでいることが多い。だから、そういう場面では人間味というか人間臭さを出せたらなと。

ーー原作の世界観を大切にしているということですが、アフレコをする際に苦労したことは?

岡本:『3月のライオン』は、ほかの現場と比べて収録スピードがめちゃくちゃ早いんですよ。「ラステス(ラストのテストアフレコ)やりたいです」とかは言えない雰囲気がありますね。本番一回でビシッと決めるべきみたいな(笑)。特に桐山なんていっぱい喋ることがあるから大変だろうなと。

(c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

ーーどのくらいのペースで進んでいるんですか?

岡本:普通の収録では4~5時間くらいかかるところが、2時間半ないし2時間ぐらいで終わります。毎回、収録の早さに圧倒されるんですが、このスピードでなせるのは、皆がキャラクターを深く理解しているからこそなんだろうなって思いますね。

ーー河西さんと岡本さんは、お互いから刺激を受けることはありますか?

河西:第一シリーズがはじまる前に二海堂は岡本くんのイメージとはかけ離れていたので、どういうアプローチをしてくるんだろうと思っていました。それを見事にキャラクターにピタッとはめてきたので、とても驚いたのを覚えています。第二シリーズに入って、二海堂の体の弱さについて描かれるシーンもあるので、そこの心情の機微だったり、零と新人王戦の決勝で当たろうと約束を交わしたのに、体調不良で……というシーンだったり、僕は岡本くんがこれをどう料理してくれるんだろうって楽しみにしています。実際に現場でアフレコしているのを聞くと、二海堂と島田(開)さんの会話は特に刺さりますね。零は決して元気なキャラクターではないので、その分、二海堂からパワーを貰っています。そんな二海堂からの力を受けて、新人戦の戦いに挑みたいです。

岡本:河西くんは華奢なのに声の音圧がすごく強いんですよ。そういう意味でもナレーションが聞きやすいし、彼の声に心が動かされる。なんて言ったらいいんだろう……可哀想とはまた違うんですけど、桐山が持っている不気味さや怖さ、天才感とかそういうのを含めた底知れない何かがナレーションから伝わってくるんですよね。ずっと聞いていたくなる、そんな印象です。

(c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

ーー先ほど「島田さん」の名前が出ましたが、二海堂が島田さんを尊敬しているように河西さん、岡本さんもそれぞれ尊敬している方はいますか?

岡本:僕は子安(武人)さんですね。最初にお会いした時に色々とアドバイスを頂いて、それから「師匠」って呼んでます。『3月のライオン』が始まってからは、役柄同様に島田さんを演じる三木(眞一郎)さんにお世話になることがとても多くて、「飲みに行くぞ」とか言って頂けるのがすごく嬉しいですね。打ち上げ後に二人で二次会に行ったこともあります。相談事も快く聞いていただいて、そのおかげで悩みが消化できています。改めて思い返してみると子安さん、三木さんにはめちゃくちゃお世話になってますね。

河西:僕はもともと、多くを語らないのに存在感をバシバシ出される、石田彰さんをとても尊敬しています。あまりお話しをしたことはないんですが、目標でもある方です。石田さんのお芝居を見て、なんでこう言っているんだろう、どういう意図でこう表現したんだろう、とかを自分なりに分析しています。あとは三木さんとこうやってレギュラーをご一緒するのが初めてなので、役どころもリンクして、三木さんから何かを得たいという気持ちが強いです。現場にいらっしゃるときは、どうやってアフレコしているんだろうって後ろの方から拝見しています。一番初めに三木さんが島田さんの声を発したときに、「胃痛持ちだと胃酸が喉に逆流してきて喉が焼けているから……」ということまでお考えになっていて、「そこまで考えてやるんだ」って、そのストイックさにとても驚いたのを鮮明に覚えています。

(c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会

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