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宇野維正の興行ランキング一刀両断!

週末の成績だけではわからない隠れヒット 『三度目の殺人』が示す日本映画を取り巻く現状

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 シルバーウィークと呼ぶにはささやかな、秋の3連休と重なった先週末のランキング。13万8300人を動員して初登場1位となったのは『エイリアン:コヴェナント』。もっとも、13万8200人を動員した2位の『ダンケルク』との差は集計上たったの100人。結果、IMAX需要の大きい『ダンケルク』が興収では2週連続1位となった。両作とも興収は2億円前後。昨年の同時期のランキングのトップ3(『君の名は。』『聲の形』『怒り』)にも割り込むことができない、少々低調な数字である。

 そんな中、実は先週から今週にかけて平日はほぼすべての日で1位、特に昼間の興行では他の作品を寄せつけない強さをみせているのが、週末の動員ランキングでは前週から一つランクダウンして先週末3位の『三度目の殺人』だ。オープニング2日間の成績は2億3311万円だったが、平日に数字を積み上げて今週月曜日までの時点で累計7億8755万円(日刊文化通信速報より)。週末の動員ランキングだけに注目していると、同日に公開された『ダンケルク』の後塵を拝し続けているように見えるが、累計では20億を超えて、『ダンケルク』と同水準のヒットを記録すると予想しておこう。

 実は先週の平日、試写で観て以来、三度目ならぬ二度目の『三度目の殺人』を観るために近所の劇場(非シネコン・チェーンの吉祥寺の昔からある映画館)を訪れたのだが、昼間に8割方客席が埋まっていることに驚かされただけでなく、その観客の年齢層の高さにそれ以上に驚かされた。場所柄(吉祥寺から徒歩・バス圏内の武蔵野市、三鷹市、杉並区あたりの住民はかなり高齢化が進んでいるのです)ということも多少あるだろうが、そのほとんどがご老人。お婆さんばかりだったら「役所広司人気?」「福山雅治人気?」などと推測もできたが、お爺さんもかなりの比率でいて、「さすが、映画がずっと娯楽の中心にあった世代は違うな」と感心するとともに、「是枝裕和監督作品」というブランドがその世代にも確実に浸透していることを目の当たりにさせられた。

 『三度目の殺人』のような硬質で優れた作品が高く支持されているのは喜ばしいことだが、こうして映画館に足を運ぶまで「ヒットしている」という実感が薄かったのは、SNSなどでそこまで騒がれていなかったからだと思い当たった。実際に、映画.comが発表している「Twitterつぶやき数」ランキングによると、『三度目の殺人』の公開初週のランキングは6位。ヒットの規模としてはひと回りもふた回りも小さい『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『ベイビー・ドライバー』よりも下位に甘んじていた。「SNSがヒットを生む」というトレンドは、現在アメリカで社会現象化するほどのメガヒットとなっている『 IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』の状況などを見ても世界的により強まっていることがわかるが、『三度目の殺人』のように依然として「SNSの外」にもヒット作があることも事実だ。

 作品が全世代に波及するのが理想なのは言うまでないが、現在公開中の実写日本映画では、『三度目の殺人』や『関ヶ原』のような観客の年齢層が高い作品、そして『君の膵臓がたべたい』のように中高生の観客層が中心の作品、つまり特定の層に強く希求する作品が着実に数字を積み上げている。言い換えるなら、実写日本映画のヒットの法則は「平日の昼間に強い作品」ということ。今年の公開作品だと、『昼顔』も同じような傾向にあった。

      

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