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『ルーム』『ムーンライト』『エクス・マキナ』……独立系製作・配給会社「A24」飛躍の理由

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 一方、質の高さでは決して期待を裏切らないA24であるが、例えば同じく独立系配給会社のIFCによる『6才のボクが、大人になるまで』や、(メジャースタジオの傘下ではあるが)低予算アート系映画を製作・配給するFox Searchlightによる『ぼくとアールと彼女のさよなら』など、より幅広いオーディエンスが気軽に見られるような作品は少ないと言える。A24の作品は、ターゲットが明確だし、観る者にその作品の世界観に飛び込むための覚悟を求める。観た後にそのメッセージ、テーマなどを深く考えさせられる作品が多い。ワインと会話の為のただのバックグラウンドとして上映しておくことなど、許されない作品なのだ。それもひとえに作品の質の高さを追求した結果なのだろう。

 ところで、2010年以降ハリウッドのマーケットは、NetflixなどのSVODという劇場公開への強力な競争相手が出現する一方、メジャースタジオはこれまで以上にビッグタイトルへと力を注ぎ、新しい独立系配給会社を温かく迎えるような環境にはなかったはずだが、A24には21世紀に設立された若い会社らしいところもしっかりと見える。それがデジタルスペースとの向き合い方である。

 代表例の1つは『エクス・マキナ』のマーケティングキャンペーンで、この作品がSXSW映画祭で上映されたとき、主人公のAvaが人気出会い系アプリの一つであるTinderに現れ、マッチした相手を、メッセージを通じて映画のウェブサイトに導くキャンペーンが話題になった。また、今年3月にはNetflixに並ぶデジタルストリーミングの大手であるAmazon Studioとのパートナーシップ契約が延長されたことが発表された。この契約はもともと2013年に結ばれたもので、アメリカではA24の作品は劇場公開の後、Amazonプライムでのストリーミング配給が確保されている。長く続くインデペンデント映画の苦境をものともせず、映画という媒体が持つ2面性ーーアートと娯楽ーーの両方を高いレベルで実現すると同時に、新しいテクノロジーを使ってミレニアル世代の映画ファンの注意を確実に引くことは、21世紀に新しくできたA24だからこそ可能な戦略であるだろう。

 その設立以来、日本未公開作品も含め、A24は年間約12本のペースでアメリカ国内で映画を配給してきたが、2016年には18本へと数をのばした。設立から5周年を迎えた2017年もアメリカ国内ではまだ5本の公開が予定されているし、来年以降も大いに注目すべき作品が控えている。決して好況とは言えないインデペンデント映画の世界であるが、エッジのきいた作品を次々と世に出してきたA24の快進撃は今後も続くのだろうか。短期間でハリウッドの中での「勝ち組」へと駆け上がった彼らーーこの先もさらにスタイリッシュで深みのある作品を提供し、インディ映画のさらなる発展へと貢献してくれることを期待したい。

参照

https://a24films.com/
http://www.indiewire.com/2015/03/dont-get-your-heart-tinder-ized-at-sxsw-64069/
http://www.slate.com/articles/arts/culturebox/2015/09/profile_of_the_independent_film_distributor_a24_the_company_behind_spring.html
http://www.hollywoodreporter.com/news/amazon-prime-a24-announce-multi-658584
http://www.reuters.com/article/brief-amazon-extends-deal-with-a24-bring-idUSFWN1GU0H1
http://variety.com/2015/voices/columns/a24-ex-machina-marketing-1201476873/
https://www.gq.com/story/a24-studio-oral-history
http://oscar.go.com/news/winners/ex-machina-is-2016-oscar-winner-for-visual-effects
http://oscar.go.com/news/winners/brie-larson-is-2016-oscar-winner-for-best-actress
http://www.bbc.com/culture/story/20150515-one-of-the-best-films-of-cannes
http://oscar.go.com/nominees/best-picture/moonlight
http://www.goldenglobes.com/film/room

■田近昌也
北海道出身。上智大学外国語学部卒。東京でインテリアの営業を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院プロデューサー科を修了。その後メジャースタジオの長編映画企画開発部門などで経験を積む。

■リリース情報
『ムーンライト』
9月15日(金)Blu-ray&DVD発売
発売元:カルチュア・パブリッシャーズ
販売元:TC エンタテインメント
提供:ファントム・フィルム、カルチュア・パブリッシャーズ、朝日新聞社
(c)2016 A24 Distribution, LLC

      

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