TBS火曜10時ドラマ、なぜ心に響く? 『逃げ恥』から『カンナさーん!』まで通じる作風

 『カンナさーん!』に学ぶポジティブシンキング

 そして今シーズンの『カンナさーん!』では、ワンオペ育児に奮闘する主人公・カンナ(渡辺直美)のパワフルでポジティブな姿勢が話題になっている。前作『あなそれ』でW不倫する主人公を描いた矢先に、不倫される側の『カンナさーん!』……その振り切り具合も、火曜ドラマがチャレンジングに制作している証ではないだろうか。離婚が珍しくなくなった今、カンナと同じようにひとりで育児を手掛けている人も少なくないだろう。「逆立ちしたって父親にはなれない」という姑(斉藤由貴)の言葉に、息子にいない父親の分も愛情を注ごうと必死になる姿は目頭が熱くなる展開だった。

 コメディタッチではあるが、カンナの試練は毎回手厳しい。夫から「浮気ではなく本気だ」と面と向かって言われたり、不倫相手と海水浴に行かなくてはならなくなったり、後輩の仕事のミスを被って上司から責められたり……それでも「2時間後には笑い話にしてやる」「チームが勝てばいい」と、底抜けに明るく立ち向かうカンナ。挙句の果てには不倫相手に元夫のことを「よろしく」と言い放つ豪快さ。もちろん、呪いに歯ぎしりすることもあるし、運命の相手にしようと思った夫も手放すはめになったが、それでも落胆はしない。そのポジティブな姿勢は、“こうありたい“という身近なお手本にもなる。そんなカンナがどんな幸せを築いていくのか、今後の展開も期待したい。

 様々な題材をテーマにしている火曜ドラマ。だが、こうして振り返ってみると、ドラマを見るたびに何か学びを得られているように思う。自由に生きられる一方で、孤独と隣り合わせの現代。独りよがりにならず、他者と関係を保ちながら自分らしくいきるとは……。今、私たちにどんな道徳心が必要なのか、どんな心持ちで現実の壁に立ち向かえばいいのか。そんな気づきをくれるTBS火曜ドラマを、これからも楽しみたい。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
『カンナさーん!』
TBS系毎週火曜よる10時~放送中
出演:渡辺直美、要潤、山口紗弥加、工藤阿須加、トリンドル玲奈、じろう(シソンヌ)、シシド・カフカ、川原瑛都、遠山俊也、朝加真由美、斉藤由貴
原作:「カンナさーん!」深谷かほる(集英社クイーンズコミックス刊)
演出:平野俊一、国本雅広
脚本:マギー
プロデューサー:千葉行利、有賀聡
製作:ケイファクトリー、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/kannasaaan/

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