「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『きみの声をとどけたい』『ハイジ アルプスの物語』

編集部の週末オススメ映画(8月25日~)

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

『きみの声をとどけたい』

 音痴です。そんなリアルサウンド映画部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『きみの声をとどけたい』。

 本作は、『時をかける少女』『ちはやふる』のマッドハウスが制作を手がけ、新人声優ユニット・NOW ON AIRの6人と三森すずこがメインキャストの声優を務めたオリジナルアニメーション映画。テーマは“声の力”。湘南を舞台に、高校生たちの青春を描く。海辺の町、日ノ坂町に暮らす16才の少女・行合なぎさは将来の夢が見つからず少し焦っていた。ある日、古びたミニFMステーションに迷い込んだなぎさはDJの真似事をする。「本気のコトバは、本気の願いは、いつか現実になるんです!」 すると、偶然にも放送されたコトバは、思いがけない人に届いていた……。

 「言葉にはタマシイが宿っているんだよ、コトダマって言ってね」。これは、劇中でなぎさちゃんが発するセリフだ。主人公であるなぎさちゃんは、小さいころに祖母から聞いたコトダマの話を信じている高校生。そんな彼女を軸に、物語は展開されていく。コトダマ(言霊)という言葉を、一度は耳にしたことがあるだろう。でも、信じている人は少ない。当たり前だ。目に見えないものを信じるのは、なかなか難しい。だが、本作のテーマは“声の力”。もとい、コトダマだ。中には、このテーマを聞いて、なんて怪しいんだ……と思い、遠ざけてしまう人もいるかもしれない。

 だが、本作で伝えたいことは、「コトダマは実在する」ではなく、「ポジティブな言葉を発することが大切」だと感じる。

 話の展開もテンポが良く、どストレートでわかりやすい。海辺の町並みは、青くて爽やか。キャラクターも可愛らしく、性格などの設定もしっかりされている。だからこそ、アニメ映画の中でも圧倒的にみやすいのだ。そして、“声”をテーマにしているだけに、何と言っても主題歌はじめ、本作で使用されている楽曲が素敵である。『響け!ユーフォニアム』や『中二病でも恋がしたい!』の劇中音楽を担当している松田彬人氏が手がけているだけあって、青春のみずみずしさと儚さを音楽でも見事に表現している。最後のシーンで流れてくる挿入歌「Wishes Come True」に思わず涙を流す人も少なくないだろう。

 SNSが普及している今だからこそ、本作を通して改めて、“声”について考えてみませんか?

■公開情報
『きみの声をとどけたい』
全国公開中
キャスト:片平美那、田中有紀、岩淵桃音、飯野美紗子、神戸光歩、鈴木陽斗実、三森すずこ
監督:伊藤尚往
脚本:石川学
キャラクターデザイン:青木俊直
アニメーションキャラクターデザイン:髙野綾
音楽:松田彬人
制作:東北新社 マッドハウス
製作:「きみの声をとどけたい」製作委員会
イメージソング:「この声が届きますように」(NOW ON AIR)
(c)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会
公式サイト:http://kimikoe.com/movie

『ハイジ アルプスの物語』

 リアルサウンド映画部のピュアガール担当・大和田がオススメするのは、『ハイジ アルプスの物語』。

 本作は、ヨハンナ・スピリの児童文学『アルプスの少女ハイジ』を、21世紀版にアレンジして実写化したもの。同じ原作を元に作られた作品には、1974年に全52話に渡って放送されていた日本のテレビアニメ『アルプスの少女ハイジ』があり、子どもから大人まで親しまれている作品です。本作の実写化は、原作を生んだスイスで、自国の宝であるハイジの物語が、いま改めて必要であるという経緯から制作がスタート。本作を観て、本場のスイスを舞台に表現された壮大な自然の情景描写に胸が膨らみ、アニメを観ていた頃に「アルムの山に行ったみたい」と抱いていた幼い頃の記憶が蘇りました。

 5歳になるまで叔母のデーテに育てられたハイジは、仕事の都合で、アルムの山小屋に住んでいる祖父のアルムおんじのもとへ預けられることに。山小屋に向かう道中では、叔母から、荷物になるからと服を何枚も重ね着させられて歩いていたハイジですが、途中で吹っ切れたように着ていた服を何枚も脱ぎ始め、真っ白な洋服一枚の姿になります。その時のハイジの開放感と、一瞬で山が気に入ったとわかる表情は、見ていてとてもすがすがしい。ハイジを演じるアヌーク・シュテフェンは、本作が映画デビュー作にも関わらず、見ている人の心をつかむような見事な演技を見せてくれます。

 アルムおんじという気難しいおじいさん役を演じるのは『ヒトラー 〜最期の12日間〜』のブルーノ・ガンツ。はじめは誰に対しても心を閉ざし、怖さも感じるほどの形相をしていたアルムおんじが、ハイジと出会い、次第に優しい表情になっていく変化を演じきっています。アルムおんじの相棒でアニメに登場している犬のヨーゼフがいなかったのがとても残念でしたが、ヤギのユキちゃんなど、『アルプスの少女ハイジ』には欠かせないキャラクターたちが本作の世界観を楽しく彩っています。

■公開情報
『ハイジ アルプスの物語』
8月26日(土)YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
監督:アラン・グスポーナー
原作:「アルプスの少女ハイジ」(講談社青い鳥文庫)
出演:アヌーク・シュテフェン、ブルーノ・ガンツ、イザベル・オットマン
協力:スイス政府観光局
配給:キノフィルムズ
原題:HEIDI/2015年/スイス・ドイツ/111分
(c)2015 Zodiac Pictures Ltd / Claussen+Putz Filmproduktion GmbH / Studiocanal Film GmbH
公式サイト:http://heidimovie.jp/

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