『打ち上げ花火』不発の一方で『キミスイ』は大健闘 SNS時代のティーンの映画の選び方

SNS時代のティーンの映画の選び方

 既に興収21億円を突破して、今年の少女コミック、及び少女向け小説原作実写映画のトップとなっている『君の膵臓をたべたい』。浜辺美波と北村匠海、主演に抜擢された2人の若手俳優の好演が印象的な作品だが、公開前は決して「客が呼べる」とされている俳優の主演作品ではないこともあって、ここまでの健闘を予想していた人は少なかったはず。自分も作品自体には好印象を持ったものの、作中で炸裂している浜辺美波の魅力は、同年代の同性からの支持を得にくいものなのではないかと読み違いをしてしまった。

 公開後にSNSを見ていて気づかされたのは、黒髪で清楚で優等生タイプでいかにも「おじさん好み」のしそうな浜辺美波が、意外にも同世代の女子中高生からもとても強い共感をもって迎え入れられていることだった。過去の作品を振り返ってみると、主人公の女の子=それを演じる女優への同性からの高い支持というのは、ティーンムービーがヒットする上での鉄則。その上で、10代、20代の一般層の観客にとっての「いい映画」の条件としてお約束の「泣ける」という評判も広まって、『キミスイ』はロングヒットに結びついているようだ。一方、SNSでは『君の名は。』的な作品を期待していた観客から失望の声も上がっている『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。もちろん、SNSにおける作品の評判が絶対ではないが、特にティーン層においては、同世代の間での評判があっという間に顕在化されて強い影響力を持ってしまうのが、今の時代の怖さである。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『君の膵臓をたべたい』
全国公開中
出演:浜辺美波、北村匠海、大友花恋、矢本悠馬、桜田通、森下大地、上地雄輔、北川景子、小栗旬
原作:住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社刊)
監督:月川翔
脚本:吉田智子
主題歌:Mr.Children「himawari」(TOY'S FACTORY)
(c)2017「君の膵臓をたべたい」製作委員会 (c)住野よる/双葉社
公式サイト:http://kimisui.jp/

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