長澤まさみは今一番面白い女優だ! 『銀魂』二面性ある“志村妙”役の魅力

長澤まさみは今一番面白い女優だ!

 6月で30歳を迎え、女優として増々磨きのかかってきた長澤まさみ。今年に入り映画やドラマだけでなく、ミュージカル『キャバレー』やアンダーアーマーの広告など幅広く活躍し、意欲的に女優活動を邁進している印象だ。絶賛公開中の映画『銀魂』では、漫画の人気キャラクターのひとりである“志村妙”役を演じ、今までにないおもしろ演技がハマり好評を得ている。今回『銀魂』を通して、長澤の新たな魅力について考察したい。

 小栗旬主演、福田雄一監督の映画『銀魂』が好調なスタートをきり、公開2週目になってもその人気は衰えていない。予想を遥かに上回るキャストの再現率で、漫画・アニメ実写化の中でも近年稀に見る成功例ではないだろうか。『劇場版 銀魂 新訳紅桜篇』をトレースし、 そこに福田ワールドをこれでもかと詰め込んでいる本作。『勇者ヨシヒコ』シリーズをはじめ、パロディを取り入れた作品を得意とする福田監督と、『銀魂』の原作者・空知英秋の笑いのセンスが見事にマッチし、バランスの良さを出せたのが成功の要因だと言える。

 さて長澤演じる妙は、新八(菅田将暉)の実姉であり、美人で面倒見の良い女性だが、怒らせると凶暴という二面性を持っている。今回登場する中でも最もギャップのあるキャラクターだ。大人の女性を感じさせる奥ゆかしい美しさは、今のどこか柔和な長澤にぴったりである。昨年放送された大河ドラマ『真田丸』(NHK)で、堺雅人演じる主人公・真田信繁の側室として生涯寄り添うきり役を演じた経験もあってか、時代劇ものの姿が実に似合っている。

 坂田銀時(小栗旬)のケガを看病している際に、銀時が逃げようとすると柔和な表情のまま、傍に用意した長刀を手に凄む様は実に滑稽であった。また、効果音だらけのドラゴンボールの漫画を真面目に淡々と読み上げたり、真顔で「てへぺろ」としたりする姿はいい意味の違和感があり、なんとも愛らしくて面白い。さらに銀時への想いに浸っている最中にストーカーの近藤勲(中村勘九郎)が現れたときに見せた表情の変化と、目を細め毒舌で捲し立てる様はまさに原作の妙そのもの。あの長澤が文芸作品を演じるような演技スタイルで、普段やらないような言動をするギャップがなんとも魅力的だ。

 長澤は「女の人は潜在的に優しい部分と強い部分を持ち合わせていると思うのですが、妙の柔らかい素顔と強い素顔はその二つの顔を表現していてそれこそが妙の魅力だと思います」と分析し、さらに「今まで、変顔に近いお芝居をしたことがなかったので、いままでとっておいて良かったなと思いました」(引用:公式サイト)とこれまでに演じたことがないキャラクターであることを語っている。今までに真面目で清純な役や、男を翻弄する魅惑的な役を多く演じてきた長澤だからこそ、『銀魂』という作品の妙という役は破壊力が凄まじい。

 また、映画が成功した要因の一つであるキャスティングに関して、松橋プロデューサーは「1番大きかったのは、長澤まさみさんに出演のOKをもらったことです。長澤さんがあの位置で面白い役をやってくれるということで、皆さんと話がしやすくなりました。『長澤さんがやってくれるんですよ』と言うことで、『なるほど』となって、お祭り感がどんどん出てきました。『祭りに乗ろう』と思ってくださる方が増えたんじゃないでしょうか」(引用:映画『銀魂』全員主役級キャスティングの鍵となったのは、長澤まさみの存在!? 松橋プロデューサーの思惑)と答えており、長澤が影の功労者だったようだ。

 今年に入って長澤の面白さの潜在能力は徐々に開花されている印象だ。『銀魂』のほかにも、キンチョーの「虫コナーズ」のCMや、今年放送されたドラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』(テレビ東京系)での「長澤まさみ 悩む」というタイトルの回など、今までにないコミカルさが垣間見える。

 そんな長澤について小栗は、映画のキャンペーンで出演した『おはよう朝日です』(朝日放送)で、「まさみちゃんは明るくなりましたね。もともと明るい子だったんでしょうけど、当時は人見知りで。すっかり大人の女性になって、スリットが入った服まで着るようになったかあ」とコメント。変顔もそうだが、長澤が大人になり、役者として面白さや明るさを気取らずに出せる余裕が出てきた結果が、今の良さに繋がったのだろう。また今までにヒロインを数多く演じてきたが、今回の妙役で、バイプレイヤーとしても良い味を出すことに驚かされた。同時に妻や母親といった役が似合う年齢になったというのも新たな発見だ。

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