KinKi Kidsからの“愛のかたまり” 『ぼくらの勇気 未満都市』が2017年によみがえった意義

KinKi Kidsからの“愛のかたまり”

土曜ドラマの可能性を切り拓いたKinKi Kids

 今も続く、日テレの土曜ドラマといえば、ジャニーズ主演で10代向けの作品という印象がある。その立役者となったのは、他ならぬKinKi Kidsだろう。1994年にドラマ『家なき子』が最高視聴率37.2%を記録する大ヒット。子どもが主役のドラマに、一気に10代の視聴者の心をつかんだ。その人気ドラマのパート2から光一が出演。以降、翌年には剛主演の『金田一少年の事件簿』がスタートし、光一主演の『銀狼怪奇ファイル』など人気作品が続く。そして、1997年に『ぼくらの勇気 未満都市』がオンエアされたのだ。

 壮絶ないじめにあう主人公をボクサー志望の美少年が救ってくれたり、学園で頻繁に起きる殺人事件を高校生が解決したり、謎の転校生が現れたり……冷静に見たら「現実的ではない」とツッコミどころ満載な設定やストーリーも、なぜかこの枠のドラマはすんなり楽しめた。それはフィクションではあるものの、子どもを決して子ども扱いせず、社会の一員であることを見せていたからかもしれない。

 そんな中、1997年に放送された『ぼくらの勇気 未満都市』は、限りなくリアルと地続きのフィクション作品だったように思う。無法地帯の隔離された空間。得体の知れない物に殺される恐怖。不都合な真実を隠蔽する大人たち―。このドラマが始まる前には、1995年から阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件、薬害エイズ事件、神戸連続児童殺傷事件……と悲惨な事件が続いていた。昨日までの当たり前が突然壊れること、作り話よりもよっぽど残酷な現実があるということを、みんなが実感していた時代。だが、その一方で数年後にやってくるミレニアム、21世紀という新しい時代の夜明けに向けて、どこか踊らされているような空虚感もあった。

 改めて考えると、2017年の今も1997年と近い時代感にあるのではないか。東日本大震災から続く大災害や原発問題、地下水の汚染が指摘された豊洲移転問題。報道されていることがどこまで真実なのかもわからない。その中で、数年後に控えた東京オリンピック……。社会の大きな動きの前に、自分なんて何の影響力も及ぼさないちっぽけな存在に感じてしまいそうになる。だが何歳だって時代の主役になれること。人生を作っているのは、偉い大人ではなく自分自身なのだということを、再びKinKi Kidsは本作を通じて発信してくれたように思う。

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