高野八誠が明かす、自らヒーロー映画『HE-LOW』を監督する理由 「特撮の魅力を世界に伝えたい」

高野八誠、なぜヒーロー映画を撮る?

「特撮ファンこそ、笑って楽しんでもらえる作品に」

ーー『HE-LOW』では、敗北した後のヒーローを描くとのことで、かなり異色の作品となりそうです。

高野:「ヒーロー」という言葉には「正義」や「かっこいい」というイメージがありますが、一方で「LOW」という単語には「最低」や「かっこわるい」というイメージがあります。つまり、『HE-LOW』は「最低なヒーロー」ということです。長らく特撮作品を見てきて、ふと感じたのが「ヒーローは戦っているうちが華」ということでした。じゃあ、戦いが終わったら、彼らはどうなるのかなと考えたことから、構想を練っていったんです。怪人たちはみんな世界を征服したがるけれど、実際に征服したらどうなるのかな、とか。たぶん、怪人が支配したとしても、この世界は大して変わらないんですよ(笑)。それに戦う相手がいないと、怪人もさぞかし困るはず。今回の映画では、暇で退屈している怪人たちの苦悩にもスポットを当てています。

ーーなかなかユニークな設定ですね(笑)。

高野:もともと特撮ファンに向けた企画なので、ひねったネタをたくさん仕込んでいるんです。“特撮あるある”とか。たとえば、巨大ロボを1回動かすのに燃料はどれだけかかるとか、戦いが始まると採石場に行くのはなぜなのかとか、特撮ヒーローものならではの定番設定に、ガンガン突っ込みを入れています(笑)。特撮ファンこそ、笑って楽しんでもらえる作品にしたいです。


ーー今作には、同じく特撮の世界で活躍する青柳尊哉さん、吉岡毅志さんも出演していて、そこも特撮ファンにとって楽しみとなりそうです。

高野:彼らは僕の特撮仲間で、よく飲みにいく関係なんですよ。それで飲んでいるときに、一緒に映画を一本作ろうよと声をかけたら、軽く引き受けてくれたんです。その後、作品の構想案を見せたりしているんですけれど、長年の付き合いだから、「高野くんの個性が表現に反映されてない」とか、かなりズバッと指摘してくれて、そこがすごくありがたいですね。今回は、監督でも照明でも音声でも、お互いの意見を交わし合いながら映画作りをしたいと思っていたので、今回のキャストとスタッフは理想的です。とても刺激的ですよ。 

ーー制作費用をクラウドファウンディングで募ったのも、すごく今っぽいやり方ですね。クラウドファンディングは、映画制作においてどんなメリットがありますか?

 高野:実は5年前に、同じように元ヒーローを集めて1本のヒーロー映画を作る構想をしたことがあって、配給まで決まっていたものの、結果的に予算面がクリアーできなくて頓挫したんです。当時はまだクラウドファンディングが認知されていなくて、映画を制作するにはあらゆる障壁がありました。もちろん、クラウドファンディングでも簡単に作れるわけではないですけれど、企業からスポンサーという形で資金を集めるのではなく、特撮ファンを中心とした方々に直接、「この企画はどうですか?」と提案できるので、好きなものを好きなように作るには向いていると思います。それに、募集をかけた時点で、賛同していただいた方々の人数や集まった金額で、その作品に本当はどれくらいのポテンシャルがあるのかを計ることができる。これは、制作者側にとってもモチベーションになるし、すごく良いシステムですよね。エンターテイメントには、本や音楽などいろいろなジャンルのものがありますが、作るうえで一番リスクが高いのは、やっぱり映画だと思います。そんな中で、クラウドファウンディングはとても透明性が高いシステムなので、あらゆる面でリスクヘッジができる。今後、このシステムを使って多様な映画が作られることを期待したいですね。

 ーー当初目標にしていた金額の5倍以上集まってる状況ですが、具体的に金額が増えたことで、映画の内容にも変更があるのでしょうか?

高野:期待以上の金額が集まったのは、本当にありがたい限りです。集まったお金は、作業効率を上げること、クオリティ面での補強に当てたいと思います。絵作りひとつとっても、想像していたより豪華にできそうなので、期待してください。

ーーちなみに、すでに売り切れていますが、今回のリターンには“爆破シーンへの出演”もあり、興味がつきません。

高野:「本当にそんな事やって危険じゃないの? 大丈夫?」って、スタッフには怒られました(笑)。それに、「爆破シーンに出演したい人なんているのか?」との声もあったのですが、僕自身に憧れがあったし、絶対に出たい人はいると思ったんです。実際、爆破シーン出演は高額だったにも関わらず、すぐに売り切れました。爆発シーンやワイヤーアクションなど、人間が本当に演じているところが特撮の魅力なので、その醍醐味を存分に味わっていただける作品にしたいと思います。

(取材・文=大和田茉椰/写真=石川真魚)

■公開情報
『HE-LOW』
監督:高野八誠
脚本:小林雄次
特別出演:青柳尊哉、吉岡毅志、須賀貴匡、大葉健二
"ヒーローがヒーロー映画を撮る”高野八誠が撮る中編特撮映画【HE-LOW】 - CAMPFIRE(キャンプファイヤー)

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