東出昌大と山崎育三郎、『あなそれ』の攻防で見せた実力 枠に収まらない存在感を読む

東出&山崎はドラマ演技の枠を超えた!

 4月クールのドラマの中で話題を独占し、終盤に視聴率を急上昇させたTBS系火曜ドラマ『あなたのことはそれほど』。不倫に溺れる主人公・美都の夫・涼太の同僚として、美都を優しい言葉で支え続けた小田原真吾が、実は夫の涼太に好意を寄せていたということが判明した第9話。その後も彼は美都を助ける一方、時には冷たい言葉を浴びせるなど、その“アメとムチ”のコントラストでドラマに華を添えた。

 この小田原を演じていたのは、ミュージカル界の貴公子として大活躍中の山崎育三郎だ。甘いルックスの影に潜むミステリアスさで、波瑠や東出昌大を惑わすだけでなく、麻生祐未演じる主人公の母親にも果敢に取り入っていく。一見すると優しい王子様タイプの彼が見せる鋭い眼光は、さすが舞台俳優と思わずにはいられないほど、テレビサイズに抑え込めない力強さだ。 

 劇中で山崎は幾度も、柔らかい表情からすっと目線をロックオンさせ、主人公夫婦の秘密を暴きだそうとカマをかける。この姿を見ると、山崎がミュージカル俳優として大成するよりも前、まだ俳優キャリアをスタートさせたばかりの頃に出演したドラマ『六番目の小夜子』(NHK)を思い出す。

 多くの若手スターを輩出しただけでなく、未だに根強い人気を誇る伝説のドラマ『六番目の小夜子』で山崎は、学校の伝統に翻弄されるクラスのひとり、加藤を演じていたのである。丸い眼鏡をかけたガリ勉の優等生で、病弱で大人しい雰囲気の一方で、時折見せる表情に妙な怖さがあった。同作の第2話、夜の学校で、山田孝之にカマをかける場面があるのだが、そこで見せる自信たっぷりの表情と振る舞いは、『あなたのことはそれほど』で波瑠を厳しい言葉で追い立てる場面と重なる。この時点で、すでに俳優・山崎育三郎の片鱗が現れていたわけだ。

 2015年に出演した『下町ロケット』(TBS系)を皮切りに、多くのドラマに出演し、現在は日本語吹替版に初挑戦したディズニー映画『美女と野獣』が記録的大ヒット中。名実ともに絶好調の彼は、この夏クールには2本のドラマに出演するのだ。6月17日から放送が開始されたWOWOWの連続ドラマW『宮沢賢治の食卓』では賢治の親友の音楽教師・嘉藤治役を演じ、7月から放送されるテレビ朝日系金曜ナイトドラマ『あいの結婚相談所』ではついにドラマ初主演。前者では実在の人物を演じ、後者では一風変わったコミカルな役に挑む。ますます彼の映像演技の幅は拡がっていく予感がする。

 ともなれば、映画館の大スクリーンで彼の歌声と姿、両方を観たいという期待が高まってくる。これまで出演した映画は、2008年に公開したインディーズ作品1本のみ。海外のミュージカル映画が相次いで日本でヒットし、ブームの兆しがある今だからこそ、彼を主演にしたミュージカル映画が作られてもいいのではないだろうか。演技力と歌唱力に加え、華があってどこかミステリアスな雰囲気を持つ。現在の日本の俳優界で、彼ほどミュージカル映画に相応しい俳優はいない。

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