マイク・ミルズからの心のこもった贈り物 『20センチュリー・ウーマン』は何度でも見たくなる

『20センチュリー・ウーマン』は何度でも見たくなる

 『人生はビギナーズ』はミルズ監督の前作のタイトルだが、たぶん私たちはすぐに学んだことを忘れてしまうし、初心者のようにもういちどやりなおさなければならないこともある。だが人生は続くし(誰かの記憶の中でも)、作品もひとつずつ作られていく。『20センチュリー・ウーマン』は、なかなか始まらないようにすらみえてくる21世紀の女性たちの新しい歴史に、「少しは役立つかもしれないから」とそっと差し出された映像のテキストなのだ。

 15歳の少年の目を通して、私たちは少し古くて同時に瑞々しいごく普通の女性たちの楽しみや悲しみを──音楽や書物が与えてくれる喜びとともに──スクリーンで経験することができる。その後、眩しい光を浴びて大空に舞い上がる──パイロットになるのが彼女の夢だったのだ──アネット・ベニングの満面の笑顔を見るなら、ラストは涙に溢れてもう何も見えないだろう。マイク・ミルズ監督からの控えめで心のこもった贈り物を、私たちは素直に受けとめてまたフレッシュに学び始めることができるのである。

■田村千穂
1970年生まれ。映画批評・研究。著書に『マリリン・モンローと原節子』(筑摩選書)、『日本映画は生きている』第5巻(岩波書店、共著)。2017年度は中央大学にて映画の授業を担当。

■公開情報
『20センチュリー・ウーマン』
丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開中
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・ガーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン、ビリー・クラダップ
提供:バップ、ロングライド
配給:ロングライド
(c)2016 MODERN PEOPLE, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:www.20cw.net

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