>  > 有機的で親密な愛の物語『光をくれた人』

『光をくれた人』は尊さに満ちた作品だーーデレク・シアンフランス監督、大舞台での演出を読む

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 『ブルーバレインタイン』(10)のデレク・シアンフランス監督が、ドリームワークスで映画を撮る。それだけでも事件だ。あの有機的かつ親密な空気感を紡ぐ演出術はインディペンデントな映画でしか成しえない所業だと思っていたが、そんな彼はかねてより『ブルーバレンタイン』の大ファンであると公言してはばからないスティーヴン・スピルバーグの誘いを受けて長編4作目をこのスタジオ映画として撮ることとなった。しかも初の原作モノ。果たしてこの大舞台と、彼らしい親密かつアーティスティックな作風は相容れるものなのか。これは才能ある映画監督がまた一つのステップを昇る試金石ともなろう。

 物語の始まりは1918年。第一次大戦の直後、戦場で心に傷を負いオーストラリアへ帰還を果たしたトム(マイケル・ファスベンダー)は、インド洋と南極海のぶつかる洋上の孤島で一人、灯台守りとしての仕事に就くこととなる。彼以外にこの島に住む者はいない。まさに外界から隔絶された地。そんな孤独な彼が、手続きのために島から本土へと戻った際、イザベル(アリシア・ヴィキャンデル)によって生命の輝きをもたらされる。二人は恋に落ち、やがて結婚。そしてイザベルはお腹の中に新たな生命を授かり……しかし運命の神は彼らに過酷な試練を与えた。授かった生命はこの世に誕生することはなかった。それも一度ならず、二度までも。そんな傷がまだ癒えぬある日、1隻のボートが島に打ち寄せられる。舟内には息絶えた男性と、元気な赤ん坊。イザベルはその子を自分たちの子として育てたいという思いに駆られるが……。

失敗を恐れず、俳優にすべてをさらけ出させる演出術

 どうやらシアンフランス監督には恐れや焦りなどなかったようだ。今回もまた、彼らのチームがよくやるように、ごく少数だけで共同生活を行いながら、演技を超えた親密な空気感を醸成していったのだという。特にファスベンダーとヴィキャンデルについては、まるで『ブルーバレンタイン』のライアン・ゴズリングとミシェル・ウィリアムズを彷彿させるかのような濃密さで、時系列を経て変容していく二人の間の複雑な感情を見事に表現している。

 作品資料を紐解くと、シアンフランスによる興味深い一言があった。曰く、「役者からの最大の贈り物は、“失敗”である」。役者にはそれが良い演技か悪い演技か自己評価することなく、すべて包み隠さずさらけ出してほしいのだという。カメラの前で思い切り恥をかいてほしいという。なるほど、過去の『ブルーバレンタイン』といい、『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』(12)といい、いずれも自由にさらけ出された唯一無二の感情が大切に内包されていた。つまるところ、今回のファスベンダーもヴィキャンデルも失敗を恐れずに全てをさらけ出す二人だからこそこの世界の住人となれたのだろう。また、彼らが安心してそのような境地にまでたどり着けるようにいざなうのが彼の演出術なのだ。

      

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