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高橋一生の演技は、なぜもっと観たくなるのか? 『おんな城主 直虎』柴咲コウとの名コンビを読む

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 高橋一生は、なんて行間案件の男なのか。

 以前の出演作であるドラマ『カルテット』の言葉を思わず引用してしまったが、主人公・直虎(柴咲コウ)に密かに思いを寄せつつも井伊家の家老としての任務を、例え嫌われても遂行する小野但馬上政次を演じる高橋一生を見ているとそう思わずにいられない。言葉の裏に隠された感情を、その表情、仕草のひとつひとつ、視線の先を目で追ってしまわずにはいられないのだ。

 その性質は、彼の演技の巧みさゆえだろう。2016年のドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)で高良健吾の職場の嫌な同僚・佐引を演じていたが、あまり大きな役ではないのに関わらず、彼のこれまで送ってきた人生が気になってしょうがなかった。ドラマ『民王』(テレビ朝日)での原作ではあまり登場しないキャラクター・秘書の貝原が、彼を主人公にしたスピンオフドラマができるまで大きくなったのも、そのクールで、コミカルかつミステリアスなキャラクターが視聴者の「もっと観たい」欲をかきたてたからだ。彼は例え、多くの台詞がなくても、その役の人生を描く場面があまりなかったとしても、そこにいるだけで、その役の人生を想像させてしまうのだ。

 また、これはあくまで1ファンの感想に過ぎないのだが、彼は、報われない恋に悶える役こそ際立つ。『カルテット』の満島ひかりに片思いする家森はもちろん、2009年の後藤ひろひと演出の舞台『ガス人間第一号』で、恋するヒロインのために自らのガスで殺人を繰り返し、最後はヒロインと共に爆発するガス人間の悲哀を演じた時の高橋は、未だに忘れられない。

 つまり、この『おんな城主直虎』(毎週日曜NHK総合午後8時〜ほか)における政次役は、本当に彼以外に演じることができる人はいないのではないかと思うほど、はまり役なのである。

 小野但馬守政次というキャラクターの面白さは、2つある。1つは、父親・政直(吹越満)との確執。もう1つは、直虎への秘めた恋である。

 世代間の確執、葛藤というものを描くことができるのも大河ドラマの醍醐味の1つだと、政次に限らずこのドラマの中のさまざまなエピソードを見ていて思うのだが、親世代から続く井伊家対小野家の確執は特に色濃く描かれている。政次の父親は、支配下にある今川家寄りの家老として井伊家の人々に忌み嫌われ、さらには政次の幼馴染であり直虎の許婚である直親(三浦春馬)の父親を貶め、死に至らせた人物である。父親のようにならないと心に誓い、幼なじみである直虎と直親を家老として支えようとする政次は、父親の「お前は必ずわしと同じ道を辿る」という言葉から逃れられないように同じ道を辿っていく。正当防衛ではあるが直親の義理の父親を殺し、井伊家を守る一心で直親を裏切り、直虎を心配するあまり、嫌われ家老として直虎に後見を降りろと執拗に迫る。だが、18話で直虎の誤解が解け、分かり合って以降の彼は、領主である直虎の厳しくも優しい相談役として、直虎を支えている。幼なじみとしての絆で結ばれた、彼の本来の理想に近い主従関係が成り立っていると言えるだろう。

 ここ数話の政次は、なんだかニヤニヤが止まらない。「今更嫁にもろうてほしいなどと言っても願い下げですよ」と言いつつ、「ざれごとです」と打ち消したり、直虎から、幼少の頃の呼び名で呼びかけられしばし照れて沈黙したり、家老としての助言の後に幼なじみとしての気遣いを滲ませたり、囲碁で直虎を打ち負かして優しく微笑んだりと、零れ出る愛情に、こっちが恥ずかしくなるほどだ。特に前回放送の20話で直親の隠し子が発覚するのだが、かつての想い人を思い出し、辛い思いを押し隠しながら領主として気丈に振舞おうとする健気な直虎を映す、すぐ後ろから彼女を見つめる政次の背中越しのショットは、決して言葉に出すことはない政次の心情を雄弁に物語っていた。

      

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