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宇野維正の興行ランキング一刀両断!

『メッセージ』好発進! ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品はブランドとして定着するか?

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 先週末の動員ランキングの1位は『美女と野獣』、2位は『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』。両作が1位と2位を独占するのは、これで5週連続となる。『美女と野獣』は先週末の時点で累計動員637万4,000人、累計興収89億1,800万円。現在でも毎週10億前後積み上げているので早々に100億は超えるだろうが、そこからどこまでいくのかに注目したい。ちょっと数字的には落ち着いてきた『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』も、先週末で累計興収約61億円。前作「名探偵コナン 純黒の悪夢(ナイトメア)」の最終興収63.3億円を超えて、シリーズ最高記録を打ち立てる見込みだ。

 トップ10に初登場したのは『ピーチガール』、『君のまなざし』、『メッセージ』、『たたら侍』の4本。初登場作品では最も上位となった『ピーチガール』だが、土日2日間の動員は12万人、興収は1億4,300万円と、300スクリーン超え(全国301スクリーン)の作品としては低調なスタート。動員では3位だったものの、4位の『ワイルド・スピード ICE BREAK』(公開4週目)、5位の『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(公開2週目)と三つ巴の争いとなっていて、興収ではその2作品の後塵を拝して5位となっている。

 今週注目したいのは、7位に初登場した『メッセージ』だ。今年のアカデミー賞で8部門にノミネートはされたものの、結局アカデミー音響編集賞(劇場で観れば誰もが納得の受賞)という地味な賞を一つとっただけ。それで、一般層にも知られているアクターが主演していないとヒットはしないと言われる(そして実際に日本公開が見送られることも多々ある)日本の外国映画興行において動員7万9,162人、興収1億625万7,700円という今回の週末2日間の成績は十分に「好発進」と言っていい数字だろう。

 本コラムではこれまでも度々、かつてのスティーヴン・スピルバーグやリドリー・スコットやロバート・ゼメキスといったヒットメイカーたちの近作の日本での興行の苦戦について触れ、「監督の名前で客が呼べる時代は終わったのか?」「最後の砦はクリント・イーストウッド?」などといった指摘をしてきたが、そんな状況にあって、『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はアート系映画の監督以外では数少ない、コンスタントに新作を発表して、それがちゃんと日本公開されて、作品ごとに確実に数字を伸ばしている監督だ。実際にヴィルヌーヴ作品は映画ファンの間で「これまで一本もハズレがない」などとも言われていて、まさに「名前で客を呼べる」監督の稀有な例と言えるだろう。

 現在、エンターテインメント映画の世界で「名前で客を呼べる」監督として、他にクエンティン・タランティーノ、クリストファー・ノーラン、デヴィッド・フィンチャー(近年はドラマシリーズに活動の軸足を移しているが)といった名前を挙げることも可能だろう。ただ、それぞれの監督がサブカルチャーの文脈であったり、アメコミ作品によるステップアップだったり、スター映画としての側面だったり、様々な複合的な要因によって名を上げてきたことに比べても、ヴィルヌーヴの地味ながらも着実なここまでのキャリアは際立っている。熱心なシャマラニスト(自分もそうだ)からは「M・ナイト・シャマランは?」というツッコミもあるかもしれないが、アメリカ本国では近作2本でヒットメイカーとして復権したM・ナイト・シャマランも、日本ではまだ復調の兆しがある程度(先々週末に公開された新作『スプリット』は初日を含む3日間で動員5万9,802人、興収7,866万5,700円)。こうして近い公開日の作品の数字で比べると、『メッセージ』の孤軍奮闘ぶりがより鮮明となる。

      

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