死体一つで1時間26分! “出オチ”では終わらない『ジェーン・ドウの解剖』の凄さ

死体で一本!『ジェーン・ドウの解剖』

 『ジェーン・ドウの解剖』でも、そういった正攻法で攻める姿勢は健在です。本作は端的に言うなら「トロールで一本!」ならぬ「死体で一本!」の映画。しかし、アンドレ監督はこの難題にも丁寧に応えています。まず巨大な倉庫を借りてスタジオに大改造(!)。カメラの位置を自在にコントロールできる環境を用意し、死体という動かない主役を様々な角度から捉え、飽きさせません。もちろん内臓もバッチリ作り込んでいますが、あくまでジェーン・ドウの謎を解くパズル1ピースとして機能させるため、観客が「思わず目を背ける」ことがないよう、時に軽快な音楽を流しながらテンポよく撮っています。結果、映画の中心には最初から最後まで死体がありました。もちろん検視官の父子のドラマも見ごたえがあるのですが、あくまで主役は死体であったと思えるはずでしょう。

 面白い設定を考えついても、それをきちんと首尾一貫して描き切るのは難しいことです。しかし本作は「死体で一本!」という突飛なアイディアを正攻法で描き切ってしまった。潔さと巧みさが輝く、まさに秀作と言うべき一本でしょう。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『ジェーン・ドウの解剖』
5月20日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督:アンドレ・ウーブレダル
出演:ブライアン・コックス、エミール・ハーシュ
2016年/アメリカ/86分/R15+
(c)2016 Autopsy Distribution, LLC. All Rights Reserved
公式サイト:janedoe.jp

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