「ティーンムービー」ブームの終焉が示す、日本映画界と芸能界への教訓

 その理由ははっきりしていて、現在の興行において、「ティーンムービー」は明らかに供給過多な状況にあることだ。事務所が売り出し中の若手俳優中心のキャスティングで、極端な作品ではシチュエーションはほぼ学園内のみと、他のジャンルの作品に比べて大幅に安上がりな製作費で作品が作れてしまう「ティーンムービー」。2、3年前から目立ち始めた好調な作品に続けとばかり、各映画会社はこぞってこのジャンルの作品を量産してきたわけだが、ティーンの観客数は当然のように有限である。

 現在それなりの規模で公開されている作品だけでも、『ReLIFE リライフ』、『暗黒女子』、『PとJK』、『サクラダリセット 前篇』、『ひるなかの流星』、『3月のライオン 前編』、『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』と実に7作品が公開中(驚くべきことに平祐奈はそのうち3作品に出演している)の「ティーンムービー」。各時期に1本か2本だったら観客も同一作品に集中することはあるかもしれないが、これではティーンの観客が分散して当然。「ティーンムービー」に関してはジャンルごと絶滅してしまわないためにも、各映画会社、各事務所ともに早急な戦略の見直しが必要だろう。そんなことを指摘されるまでもなく、もうとっくに水面下では見直しが始まっているとは思いますが。

■宇野維正
音楽・映画ジャーナリスト。「リアルサウンド映画部」主筆。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「NAVI CARS」ほかで批評/コラム/対談を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)。Twitter

■公開情報
『ReLIFE リライフ』
全国公開中
原作:夜宵草著「ReLIFE」(comicoにて連載中)
監督:古澤健
脚本:阿相クミコ
出演:中川大志、平祐奈、高杉真宙、池田エライザ、岡崎紗絵、千葉雄大、市川実日子
企画:カルチュア・エンタテインメント
配給:松竹
制作プロダクション:C&Iエンタテインメント
(c)2017「ReLIFE」製作委員会 (c)夜宵草/comico
公式サイト:relife-movie.jp

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