>  > BOMIの『SING/シング』評

BOMI「えいがのじかん」第3回

BOMIの『SING/シング』評:歌は無条件に速いスピードで人の心に届く

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 “オーディション”と言えば、私も中高生の時、(当時から歌手になりたかったので)いろいろ受けまくりました。何を歌ったかな…あんまり定かじゃないんですが…。あ、歌に入るまでに50秒前奏のある曲を歌って、審査員に怒られたことがありましたね。高校生の頃には背伸びをして、アリシア・キーズなんかを歌ったりしていました。当時は大阪に暮らしていたのですが、最終オーディションは東京であったんですよ。だから、東京という街は私にとってとてもキラキラしていましたね。

 そう、中高時代は私にとってかなりの暗黒時代で、当時ぶっちぎりでいじめられっ子だった私が、無理をして人とコミュニケーションを取らなくても、身を委ねられる場所が、歌だった。歌を歌っている時は、いじめられずにすんだ。歌を歌うことが自分の救いになっていたんですね。もちろん緊張はするのですが、たくさんの人の前で歌った時に、そういった気持ちが解放されたような気がしたんです。『SING/シング』では、私がその時に感じた解放感が、縦横無尽に、映像とともに存分に表現されていました。

20170419-sing-sub2.jpeg

 

 やもすると、一見どこにでもあるストーリーの退屈な映画に思えるかもしれない。でも、この普遍的なストーリーをつぶさに描くことが、『SING/シング』という映画が成功した理由なんじゃないかなと思うんです。町のはみ出し者や嫌われ者、自分が本当にやりたいことをできないような、どこか社会にうまく適合できない部分を持ったキャラクターたちが、抱えているものを解放していく(本当の自分の気持ちに気づく)シーンがたくさん登場します。表現することって、原初的な感情の体験としては、自己顕示欲云々ではないんだな、純粋な“好き”なんだなって。この作品では、“音楽”こそが登場人物。みんなの解放のツールであり、“救い”になっていた。

 歌は、無条件に速いスピードで人の心に届きます。本で、1文字目を読んで泣いてしまうことってなかなかないと思うんですが、音楽では、1音目を聞いて泣いてしまうことってありますよね。それに加え、ストーリーというゆっくりしっかり進むモーターが徐々に加速して、冒頭にも書いた通り、主人公たちと一緒に時間を経た私は、文字通り観客目線で、ラストのライブシーンでずっと泣きっぱなしでした(笑)。台詞ではなく音楽に状況を語らせ過ぎてしまっているが故によくわからなくなってブレてしまう作品があったりもしますが、『SING/シング』はそれが嫌味なくストレートにやれていた。この種のストレートさ、大事。

20170419-sing-sub3.jpeg

 

 私は字幕版を観たのですが、吹替版も大好評だそうで。吹替版は、音楽プロデューサーが蔦谷好位置さん、歌詞監修がいしわたり淳治さんという鉄壁の布陣なんですね。

 いしわたりさんは素晴らしい歌詞を書かれる方ですが、歌詞のディレクションに特化したお仕事もされていて、またこれがとてもスゴいんですよ。昔、友達のバンドが一度いしわたりさんに歌詞の監修をしてもらったことがあって、最初の歌詞を読ませてもらった後に、いしわたりさんがこことここを変えたと聞いたところが、「わかる!」と手を叩きたくなるくらい、指摘や提案が的確で。より言葉の解釈が鋭く、深みが増すやり方を心得ていらっしゃるんですね。私自身も歌詞を書きますが、言いたいことは明確にあるのにうまく言葉が見つからない時って結構あるんですよね。そういう時に適切な言葉を与えてくれる方だと思うので、吹替版の歌詞も相当スゴいことになっているんだろうと思います。蔦谷さんも、サウンドプロデューサーとしてど真ん中に投げられる素晴らしい方ですから、この組み合わせはやっぱり気になりますし、吹替版も観てみたいですね。字幕版と吹替版を両方観比べると、より楽しさが増すような気がします。

 さて、本編が終わってすぐに『SING2』製作決定! と出ていましたが、今作でもう壊れかけた劇場は建て直されてしまうことが決まった故、ストーリーがどうなることやらちょっぴり心配ですが、でもきっと観に行ってしまうだろうな。映画の中の純粋なみんなに会いたくて(笑)。

(取材・構成・撮影=宮川翔)

■BOMI(ボーミ)
シンガー。2012年6月に日本コロムビアよりミニアルバム『キーゼルバッファ』でメジャーデビュー。2015年にセカンド・アルバム『BORN IN THE U.S.A.』を発表。そして昨年12月にはTOKYO RECORDINGSプロデュースによる最新アルバム『A_B』をリリースした。モデルや女優としても活躍中。公式サイトTwitterFacebook

■公開情報
『SING/シング』
全国公開中
監督・脚本:ガース・ジェニングス
製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー
出演:マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン、セス・マクファーレン、スカーレット・ヨハンソン、ジョン・C・ライリー、タロン・エガートン、トリー・ケリーほか
出演(吹替版):内村光良、MISIA、長澤まさみ、大橋卓弥(スキマスイッチ)、斎藤司(トレンディエンジェル)、山寺宏一、坂本真綾、田中真弓、宮野真守、谷山紀章、水樹奈々、大地真央
吹替版演出:三間雅文
日本語吹替版音楽プロデューサー:蔦谷好位置
日本語歌詞監修:いしわたり淳治
配給:東宝東和
(c)Universal Studios.
公式サイト:http://sing-movie.jp/

      

「BOMIの『SING/シング』評:歌は無条件に速いスピードで人の心に届く」のページです。の最新ニュースで映画をもっと楽しく!「リアルサウンド 映画部」は、映画・ドラマ情報とレビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版