女子高生マウンティング合戦に漂う美と残酷さーー清水富美加&飯豊まりえ『暗黒女子』の背徳

飯豊まりえが体現する“時間制限の美しさ”

 本作を手がけた監督である耶雲哉治監督の『百瀬、こっちを向いて。』を観た時も思ったのだが、女子高生というのはそれだけで美しく、それだけで傲慢で、残酷だ。『百瀬、こっちを向いて。』における屋上に佇むショートカットの早見あかりの姿は、揺れるスカートにちらりと見える白い太ももを垣間見るだけで罪深いような気がしてくる。主人公の少年を見るために振り返った彼女の表情は、違う人に一途なだけに残酷で、それだというのに許される。なぜなら彼女は美しく光り輝いているから。そしてそれは『暗黒女子』の言葉をそのまま引用すれば、「時間制限のある美しさ」なのだ。学園の屋上から落ちていく女王蜂・白石いつみもまた、そんな罪深いような美しさを垣間見せながらゆっくりとゆっくりと落ちていった。

 この映画は、高校生活のたった3年間を、人生全て、人生の輝き全てだと思い込んだ少女たちの物語でもある。清野菜名演じる志夜が、「女子高生である1年は貴重だから、今しかないから!」と叫ぶように、彼女たちには今しかない。大人から見ればたった1年の我慢で、あさはかな恋愛で、あさはかな憧れやコンプレックスだったとしても、彼女たちはそんな簡単なことで大きな罪を犯してしまうのである。

 スイーツでいっぱいのテーブルに並んだ女子高生たちの「最後の晩餐」。その可愛らしい見た目とは裏腹なドロドロした欲望。ぜひ一度、ご賞味あれ。

■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。

■公開情報
『暗黒女子』
全国公開中
出演:清水富美加、飯豊まりえ、清野菜名、玉城ティナ、小島梨里杏、平祐奈、升毅、千葉雄大
原作:秋吉理香子『暗黒女子』(双葉文庫)
監督:耶雲哉治
脚本:岡田麿里
制作プロダクション:ROBOT
配給:東映/ショウゲート
(c)2017「暗黒女子」製作委員会 (c)秋吉理香子/双葉社
公式サイト:ankoku-movie.jp

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