『哭声/コクソン』の“ジャンル横断”はなぜ成立した? 無能な主人公の行動原理から探る

『哭声/コクソン』“ジャンル横断”なぜ成立?

 本作は「大切な人を守りたい」という普遍的かつ感情移入をし易い行動原理を持った主人公を置くことで、狂った物語に一本筋が通し、"どっちらけ"になるのを回避している。そして同時に、本作を多くの人が「怖い」と思うものに成立させた。大切な人を守りたいのに、状況が理解すら出来ない方向に転がり、しかも確実に悪化していく……家族でも友だちでも恋人でも同僚でも何でもいい。誰か一人でも特別な他人がいるのなら、これほどの恐怖はないだろう。先にも書いた通り、本作は観客によって物語の解釈が異なるタイプの映画だ。その違いを語り合うのも楽しい映画だろう。その一方で、大切な他人を持つ全ての人にとって、最悪の悪夢を見せてくれる作品である。必見だ。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『哭声/コクソン』
3月11日(土)、シネマート新宿ほかにて公開
監督:ナ・ホンジン
出演:クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村隼、チョン・ウヒ
配給:クロックワークス
2016年/韓国/シネマスコープ/DCP5.1ch/156分
(c)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION
公式サイト:kokuson.com

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