『カルテット』家森諭高(高橋一生)には大きな謎が残っている? 初回からの“伏線”を考える

『カルテット』初回からの伏線を考える

家森の心の穴は、埋まる? 広がる?

 そもそも家森が初登場したシーンは、かなり強烈だった。道を訊かれただけの女性に対してキスをする、チャラい男だと印象づけられた。だが詳細に描かれる家森のキャラクターは、ゴミ出しの際に息子を彷彿とさせる小学生に目を奪われたり、すずめに恋心を抱きながらもその想いを胸に秘めて支え続けるなど、かなり繊細なイメージにすり替わっている。ならば、なぜあんな登場の仕方をしたのだろう。

 「人生のリセットボタンを押さない」と、別府に伝えながらタンタンタンッと腕をたたくときも、真紀を見送り泣き崩れるすずめの背中に添える手も、慎重さを感じさせる。Vシネ時代のキャラクターだという『千と千尋の神隠し』(あ、これも名前が奪われるテーマの映画ですね)の青蛙のような声で「ワシを倒してから行けー」とふざけるシーンでさえ、直接触れない。まるで壊れないように、恐る恐る触れるような、その距離感はまだ明かされていない過去に紐付いているのではと思えてならないのだ。

 「そういえば、あのシーンって……」と思うところは無数にあって、何度でも反すうできるのが、『カルテット』の面白いところ。最終回では、こうした違和感や疑問が全てクリアになるかもしれないし、ならないかもしれない。なぜなら、そんな白・黒はっきりできないのが、おとなの掟なのだから。人生はちょっとしたキッカケで大きく変わるし、見方によって加害者にも被害者にもなるし、本当の名前よりも愛称が実態となることもある。真実は、今自分が見ている一面にすぎない、だからそれぞれの真実をすり合わせることが大事なのだということがわかるドラマ。最終回を見終わったあとも、「あのシーンって、こうなのでは?」とファン同士で話し合えたら、こんなにテーマが視聴者に伝わる素晴らしいドラマはないだろう。

(文=佐藤結衣)

■番組情報
火曜ドラマ『カルテット』毎週火曜22:00〜22:54 TBS系列
出演:松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平、吉岡里帆、富澤たけし(サンドウィッチマン)、八木亜希子、Mummy-D、もたいまさこ、宮藤官九郎
第1話ゲスト:イッセー尾形、菊池亜希子
第2話ゲスト:菊池亜希子
第3話ゲスト:前田旺志郎、中村優子、太田しずく、辻よしなり、高橋源一郎
第4話ゲスト:高橋メアリージュン、大江優成、長島敬三
第5話ゲスト:浅野和之、平原テツ、安藤輪子、森岡龍
第6話ゲスト:大森靖子、阿部力
第8話ゲスト:大倉孝二、木下政治、森岡龍、ミッキー・カーチス
第9話ゲスト:大倉孝二、篠原ゆき子、木下政治、坂本美雨
脚本:坂元裕二
チーフプロデュース・演出:土井裕泰
プロデュース:佐野亜裕美
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/quartet2017/
公式Twitter:@quartet_tbs
公式Instagram:@quartet_tbs
公式LINE:@quartet 

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