広瀬すずの“負けん気”はスポ根もので輝く! 『チア☆ダン』が大人世代にも“効く”理由

広瀬すず、『チア☆ダン』でさらに飛躍の予感

 日本アカデミー賞の授賞式やブログで語ったように、最近の広瀬にとって大きな転機となったのは、『怒り』で沖縄の少女・泉を演じたことだったようだ。李相日監督から何度もダメ出しされた広瀬は「自分とは勝負しないんだ」と言われたという。この言葉はかなりこたえたらしい。「図星だったんだよな」、「この作品で本物の悔しいと出逢った」と語るブログの言葉には、若手のトップに立ってなお闘争心の衰えない、戦い続けられる強さを感じる。撮影が終わった作品で理想の演技ができなかった悔しさは、次の作品にぶつける。悔しさを忘れないことで、広瀬すずは自分をアップデートしているらしい。(参考:広瀬すずオフィシャルブログ「すずの音」Powered by Ameba

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 実は、同じような質問を別の若手女優にしたことがある。「このシーンは激しい感情を表現しなくてはならなくて、なかなか監督のOKが出なかったそうだけど、難しかったですか?」と。するとその女優は、「どうだったかな? 私、けっこう忘れちゃうんです。引きずらないので」と明るい表情で答えた。広瀬と同年代の彼女は若く美しく聡明で、話題作が続くという売れっ子のポジションも同じ。でも、執念とも呼べるレベルの負けん気だけは、彼女にはないのだった。しかし、そんな彼女も、日本アカデミー賞の授賞式で、主演女優賞候補として壇上に立つ広瀬を複雑な表情で見つめていた。これから彼女の負けん気に火が点くのかもしれない。

 一方、助演女優賞部門では、広瀬ではなく、1歳上の杉咲花が最優秀賞を獲得した。まだまだ広瀬にとっても目指すところはありそうだ。ことさらに競争を煽るつもりはないが、『チア☆ダン』の劇中のように、若くパワーにあふれた女性たちがライバルを意識し自分自身と戦いながら見せる演技は、面白いに決まっている。これからも、戦うことを忘れがちな大人である自分に喝を入れるためにも、広瀬すずの映画をウォッチし続けたい。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■公開情報
『チア☆ダン 〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』
全国東宝系にて公開中
出演:広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜、富田望生、福原遥、真剣佑、柳ゆり菜、健太郎、南乃彩希、陽月華、木下隆行(TKO)、安藤玉恵、緋田康人、きたろう、天海祐希
監督:河合勇人
脚本:林民夫
配給:東宝
(c)2017 映画「チア☆ダン」製作委員会
公式サイト:http://cheerdance-movie.jp/

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