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中条あやみが大化けする日は近い? 『チア☆ダン』部長役で見せた新境地

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 『チア☆ダン 女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話』の中条あやみが良い。この女優はひょっとしたら、ひょっとする。そんな予感がむくむくと湧き上がる。おそらく大化けする日も近いのではないか。

 わたしは中条あやみに対して無知である。初めて彼女を認識したのは『セトウツミ』という映画でのことだった。この作品は基本的に池松壮亮と菅田将暉の屋外でのふたり芝居なのだが、あるとき、ふらっと彼女扮するヒロインが登場する。そして「男子ってバカだよね」とでも言いたげな視線を投げかけ、去っていく。

 関西弁で延々喋っている男子ふたりの世界はまるでシェルターのようで、このヒロインは状況的にはシェルターに迷い込んだようなものである。だが、迷い込んでいるにもかかわらず、猫のように遠慮がない彼女は、一瞥したまま、ただ通り過ぎる。ただそれだけの印象が、やけに後をひく。まるでパクチーのような魅惑。

 『セトウツミ』における中条あやみの存在感は、ある種の“批評”として機能していた。どうでもいい話を延々話し続ける男子たちの“終わらない日常”を、文字通りの上から目線で“そんなもん、いずれ終わる”と冷酷に告げるメッセンジャーのように、そこにいたと思う。そう、虚構を虚構と認識させるための現実としての存在感。はっと我に返させるといえばいいのか。言ってみれば“冷たい水”だが、いい匂いがする。そんな感じだ。

 その次に彼女を見たのは、ドラマ『ストレンジャー~バケモノが事件を暴く~』だった(公開日は『セトウツミ』のほうが遅いが、わたしは試写で観ていた)。この単発ドラマは、萩尾望都の伝説的名作漫画『ポーの一族』を原案とするなかなかに大胆な作品だったが、中条は、日本人にはなかなか難しい耽美な世界観を見事成立させる大きな役割を担っていた。主演は香取慎吾で、香取も中条も不老不死の哀しき一族なのだが、中条が香取に指図する、その設定が素晴らしくハマっていた。香取はいい女優と出逢うと輝くが、耽美とは縁がないと思われた香取にこの役はフィットした。中条が超然と指図する役だったからだと思う。

 中条はもともとモデルだから、『ストレンジャー』のような、この世ならざる者を演じるのは、ひょっとしたらお手のものなのかもしれないが、わたしは『セトウツミ』のとき以上に、彼女に瞠目させられた。ただスタイルがいいわけではない。存在そのものに<品>があるのだ。ここで演じたキャラクターはわがまま気ままでヒステリックでさえあるのだが、中条が演じると、エレガントになるし、コケティッシュになる。わざとらしさがない。このキャラクターが無理をしたり、振る舞ったりしているわけではなく、生まれながらに、そうなのだということが伝わってくる。

 つまり、中条あやみは、役のバックグラウンドを、説明抜きに、画面に漂わせることができる。

 人間の歴史。10年生きたなら10年の歴史があり、20年生きたなら20年の歴史がある。その真実を、“透明な地層”として、体感させる。しかも、さり気なく。彼女はそのような演じ手なのだということを、わたしは直感した。

 あれから一年が過ぎた。すべてがサブタイトルで説明されているような『チア☆ダン』は、一見、中条には似つかわしくない企画に思える。いわゆる部活映画である。チアダンス部もまた体育会系であり、大ざっぱに言ってしまえば、汗と涙と根性の物語である。しかも実話系。中条には、あまりにも生臭い企画ではないか。当初、わたしはそう思った。だが、杞憂だった。

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 役どころも意外である。鬼顧問に命じられ、部長を任せられる女の子。彼女だけが、中学からチアダンスをやっていたから、という設定なのだが、頭もルックスも良く、しかもリーダーというポジションは、わたしが『セトウツミ』や『ストレンジャー』で感じた中条あやみの資質とはかなり開きがある。個人的なイメージだが、中条にはどこか“群れない”イメージがあったからだ。

 だが、実際、観てみると、中条にしか醸し出せないものがあった。

 このリーダーは、家柄にも、美貌にも恵まれた、しかも、自尊心が肥大していない、おそらくは努力家なのだが、恵まれているがゆえに、自ら何かを掴み取る能動性に欠けているキャラクターとして描写されている。つまりは、あらかじめ、“与えられている”がゆえに“飢餓”に陥ることがない、という<弱さ>がある。

 『セトウツミ』でも、『ストレンジャー』でも、中条は<強い>キャラクターだった。前述したように、それは<品のある強さ>で、それゆえ、中条の個性が輝いていた。

 <弱い>中条? 不思議な感覚で、映画全編を見守っていったが、最終盤の劇的な展開を観終えた後、こう感じた。そうか、中条あやみは、人間の<弱さ>にも品を与えることができるのだなと。

      

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