月9は“西内まりや”をもてあましている? 『あすこん』後半に期待すること

 話題は「歴代最低視聴率の更新」ばかりで、そのニュースがことごとくYahoo!トップにあげられてしまう悪循環……。さらに、ストーリーやキャストへの勝手気ままなツッコミがネット上を飛び交うなど、とにかくいい話が入ってこない『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系、以下『あすこん』)。

 しかし、『TVer』などでの配信数はそれなりの数値を記録するなど、ティーンから30代前半の女性に熱心な視聴者が多いのは間違いない。特に2月13日放送の4話で、神谷(山崎育三郎)が、名波(山村隆太)の目の前で強引にあすか(西内まりや)の唇を奪ったシーンは、大きな反響を呼んでいた。

 「幸せな結婚を目指すOLのラブストーリー」は、1980年代から多くの作品が手がけられてきたが、現在でも一定数以上の需要があり、西内まりやと山村隆太のコンビは鮮度十分。フジテレビや月9への逆風を差し引いても、「もっと話題になり、もっと見てもらえる」レベルの作品なのだが、どこか「惜しい」と思わせる理由は何なのだろうか。

西内まりやを引き立てる映像の功罪

 エンディングのマネキンチャレンジを見れば分かるように、『あすこん』は全編を通して「カワイイ西内まりや」が意図的に撮られている。実際、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)らを手がけた演出家・並木道子の映像はクリアで美しく、西内の美ぼうを引き立てている。

 しかし、西内は当作について、「あすかを応援したくなるストーリーだと思いました」と話していたが、そのコンセプトとクリアで美しい映像がフィットしていない。大手銀行、テレビ局、先輩・小野(森田甘路)の豪華マンションなどの華やかな空間は、1990年前後のトレンディドラマ全盛期ならともかく、浮かれた人の少ない現在では「カッコよすぎて応援しづらい」という人が多いのではないか。

 「カッコよすぎて応援しづらい」のは、そのまま西内本人にも当てはまる。身長170㎝のモデルらしい体型、アーティスト活動やバラエティ番組もこなす器用さ、謙虚で頑張り屋さんの性格……やっかみを持たれてしまうほどの万能さがあり、優等生なのだ。かつて、「10代が選ぶなりたい顔」の1位に輝いたことからも分かるように、現時点では「憧れられることはあっても、共感は集めにくい」タイプ。つまり、普通の女性を演じさせようとするのは、時期尚早なのかもしれない。

個性あふれるヒロインで才能開花

 しかし、そこは才能あふれる西内。普通の女性は難しくても、個性あふれるヒロインの役では、同世代屈指の存在感を見せてきた。初主演ドラマ『スイッチガール!!』(フジテレビTWO、2011~2013年)は、オンのキラキラギャル姿と、オフの変顔+ダサコーデ姿を演じ分けたほか、セクシーなシーンもてんこ盛り。イメージダウンを恐れない体当たりの演技でファンをつかみ、第2シリーズまで制作された。

 さらに、2作目の主演ドラマ『山田くんと七人の魔女』(フジテレビ系、2013年)でも、男子生徒と入れ替わった女子高生をコミカルに演じたほか、キスシーンを連発。コメディのベースとなるハジけるような演技と、瞬時に人格が入れ替わるリズム感のよさを感じさせた。

 その反面、3作目の主演ドラマ『ホテルコンシェルジュ』(TBS系、2015年)では、「ひたむきに頑張る普通の女性」というキャラクター設定で、思い切りのいい演技を見せられず、ポテンシャルを出し切ったとは言い難い。現状、『あすこん』もそれと似た道を辿っているのが気がかりだ。

期待されるテンポのいい会話劇

 今後の『あすこん』に望みたいのは、テンポのいい会話と、舞台を思わせる大きな表現力。物語の軸となる、「あすか、名波、神谷の三角関係をリズムよく、ダイナミックに見せられるか」が鍵を握っている。

 これまではスローな言葉のやり取りばかりだったが、西内、山村、山崎の3人はそろってアーティスト。セッション経験も豊富なのだから、テンポのいい会話の応酬がもっとあってもいいだろう。「3人の結婚観はバラバラでも、会話や呼吸のテンポはシンクロしている」というシーンを見せられれば、「さすがアーティスト同士」と評判を呼ぶはずだ。

 同様に、普通の男女を演じる分、現在は3人とも持ち前の表現力を封印している状態と言える。今後の展開で望みたいのは、終盤に向けてその抑制を解き、ステージ同様の表情や身のこなしを見せること。

 たとえば、結婚観の異なる3人が単に理解し合うのではなく、西内がハジけるような演技を見せたとき、数々の“対バン”で鍛えられた山村がどんな対応をするのか。ミュージカル界のプリンス・山崎がどう受け止めるのか。“共演”ではなく“競演”。それぞれが持ち前のパフォーマンスを爆発させられたら……という期待は大きい。

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