『ドクター・ストレンジ』をより楽しむ方法! 杉山すぴ豊が“マーベル次作に繋がる伏線”を解説

『ドクター・ストレンジ』裏設定に迫る

 いよいよ『ドクター・ストレンジ』が公開されました。

 マーベルが誇る最強の魔法使いヒーローがスクリーンで大活躍! この作品の素晴らしさについてはネットでも多くの方がレビューを書かれています。カンバーバッチのハマリ具合と魔法大戦のイメージに圧倒。そしてこの作品は今までのマーベル映画を観ていなくても楽しめる一本です。

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 新たなヒーローの誕生を一から描いているので入りやすい。ストレンジがコミックでデビューしたのは1963年で、アイアンマン、X-MEN、アベンジャーズと“同期”ですが、彼らより少し遅れての映画デビューとなりました。

 ただその理由は映画を観て納得しました。まず、いまだかつてない魔法表現をするためにVFXの進歩を待たねばならなかった。またマーベル・シネマティック・ユニバース(マーベル映画)は、2008年のパワードスーツを着た社長ヒーロー「アイアンマン」から始まりましたが、基本マーベルのヒーローは科学が生んだSF系の超人たちです。

 「マイティ・ソー」は“神様”ですが、別宇宙に住む超人族を地球の人々はたまたま神とあがめていた、という設定なので本当は“エイリアン”ですからね。そこに“魔法”というファンタジーの要素を持ち込むには、もう少し観客が“なんでもありの世界”になれてからの方がいいと判断したのかもしれません。

 というのも最近のマーベルはいつも対照的な作品を続けて公開します。シリアスなサスペンス・アクションの『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』の後に愉快な宇宙活劇『ガーディアンズ オブ ギャラクシー』、街全体が戦いの場となる『アベンジャーズ:エイジ オブ ウルトロン』の次に子ども部屋での戦いがクライマックスの『アントマン』、と(笑)。このギャップがすごい。

 今回も『シビル・ウォー:キャプテン・アメリカ』で人間同士がもめてる一方で、魔法使いの内輪もめ『ドクター・ストレンジ』の登場。こういう極端な幅で見せて行くことでマーベル・シネマティック・ユニバースの懐の大きさを現し、どんなヒーローでもOK! 状態を作ったのでしょう。

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 しかし一番の理由はこの役にピッタリの役者が見つかるまで待っていたのかもしれません。というのも、ストレンジはマスクをかぶらない素顔のヒーロー。しかもエキセントリックな一面もあるが、大人の男の魅力をもった人物。“顔出し”と“演技力”が問われるキャラなので“華のある名優”に演じさせる必要があった。カンバーバッチという逸材に出会えたからこそGO! が出たのでしょう。

 ストレンジの衣装はコミックスで見る分にはいいですが、あのオリエンタルな格好を白人がして映画に登場したらギャグになってしまう。しかし、カンバーバッチのストレンジ姿にそれは感じない。彼がこのキャラクターに見事に命を吹き込んでいるから違和感がないのです。

 役柄とキャラクターのマッチングという意味では『アイアンマン』のロバート・ダウニー・Jrに匹敵する素晴らしさ。

 実は『アイアンマン』と『ドクター・ストレンジ』は構成が似ていて“ちょっと高慢ちきなセレブが人生を変える出来ごとに遭遇しヒーローとして覚醒する”のです。アイアンマンと被るから、少し間をあけてから映画化したのかもしれませんね。

 なおストレンジは次のマイティ・ソー映画『ラグナロク』を経て、アベンジャーズ映画第三弾『アベンジャーズ:インフィニティ・ウォー』に登場します。アイアンマンとドクター・ストレンジの共闘は、ダウニー・Jrとカンバーバッチの共演であり、TVの『シャーロック』と映画『シャーロック・ホームズ』の夢の顔合わせでもあるのです。

 ちなみに映画版『シャーロック・ホームズ』に出演したレイチェル・マクアダムスが、今回の『ドクター・ストレンジ』のヒロインというのも面白い組み合わせです。先ほどマーベルが映画化するまでに時間がかかった、と言いましたが、一度TV映画化(ドラマ・シリーズには至らず)されているし、何度か映画化の話はあったようです。

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