大河ドラマは朝ドラ並の人気を獲得できるか? 『おんな城主 直虎』森下佳子の脚本を考察

 幼少期の絶対的な体験が、後の人生を支配してしまうという見せ方は『ごちそうさん』だけでなく『白夜行』や、『わたしを離さないで』(06年、16年/ともにTBS系)でも描かれていたものだ。特に伊井直親役の三浦春馬が出演していた『わたしを離さないで』では、外界から遮断されたコミュニティで育ち、特殊な価値観を植え付けられた子どもたちの物語であったため、幼少期の人間関係と原体験が丁寧に描かれ、それが森下のドラマに厚みを与えていた。

 大河ドラマは、主人公となる歴史上の人物の生涯と歴史的な出来事を満遍なく描こうとするあまり、冗長なものとなってしまうことが多い。『真田丸』の三谷幸喜が優れていたのは、史実を踏まえた上で歴史の網目をかいくぐるストーリー展開と、見せるところは見せて、省略するところは大胆に省略する緩急の付け方だった。つまり見せたいエピソードの時間配分の取捨選択こそが大河ドラマの明暗を分けるのだが、『おんな城主 直虎』では、なんと一か月(4話)をかけて直虎の幼少期を描くという。このことに対して賛否があるようだが、個人的には『ごちそうさん』の幼少期の描写が好きで一週で終わってしまったのが残念だったので、大歓迎である。

 『ごちそうさん』もそうだが、日曜劇場で放送されていた『JIN -仁-』や『天皇の料理番』(09年、15年/ともにTBS系)など、森下は歴史モノを多数手がけている。大河ドラマこそはじめてだが、現代劇を書いていた頃から、幼少期を起点とした一人の人間の人生を描くということを森下は繰りかえしてきたことを考えると、長い時間の流れの中で人間を描いてきたと言える。そんな森下の作劇手法は、大河ドラマと相性は良いのではないかと思う。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『おんな城主 直虎』
2017年1月8日(日)スタート(全50回)
[NHK総合]毎週日曜20:00〜20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00〜18:45
作:森下佳子
主演:柴咲コウ
制作統括:岡本幸江
プロデューサー:松川博敬
演出:渡辺一貴、福井充広、藤並英樹
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/naotora/

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