ドラマ版『釣りバカ日誌』が旧作ファンからも愛される理由 新春スペシャルで視聴者増加か

一番の要因は、名優たちの共演

 そして何より肝心なのが、やはりドラマ第1回での掴みである。掴みに成功した一番の要因は、西田敏行と初回のゲストである武田鉄矢の関係性。社長と定年間際の係長という因縁バトルを持ってきたのだ。背丈も似ていて、70〜80年代ドラマ界のライバル関係でもある名優の2人。たとえるなら、スタローンとシュワルツェネッガーのような両巨頭の夢の競演である。その隙のない芸達者なやりとりはもはや名人芸で、どんな台本でもこの2人は面白くしてくれるのではないかと思わせるほどだ。

 そういった鉄板の2人の存在もあって、お茶の間の興味を惹いた同ドラマ。そこで、興味本位であった視聴者の心をがっちり掴んだのが、同ドラマの主人公を演じた濱田岳ではないだろうか。俳優としてのキャリアはもちろんのこと、2015年に始まったKDDI au「三太郎シリーズ」でCM好感度上位に入り、愛されキャラとして浸透。

 年上や上司に対しても物怖じせず、でも憎めないキャラが、若くして西田が演じたハマちゃんに通じるところがあった。濱田は、旧作ファンも納得の演技をみせたのだ。そして旧作では描かれない、ツンデレキャラであるみち子役の広瀬アリスが醸し出す、母性的な魅力。物語が進んでいくうちにどんどん可愛く見えてくるのである。

 あらゆる要因が重なり、映画に負けじと幅広い層から支持される人気作品になりつつある『釣りバカ日誌 新入社員 浜崎伝助』。今回のお正月スペシャルでは、旧作の映画のように初の地方ロケも行い、もはや映画と変わらないボリュームの内容となっている。テレビ東京としても、長年続けていた正月時代劇を辞めて、挑戦した作品である。ドラマシリーズでは旧作ファンを納得させる戦いがあったが、今回は長年の時代劇ファンを納得させる戦いが待っている。

 その結果次第で、かつてのプログラムピクチャーのように、お正月の風物詩となる可能性もあるだろう。そして一番気になる、みち子さんとの“合体”がドラマでは未遂に終わってしまっているので、その行方もファンには気になるところだ。

(文=本 手)

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