濱口竜介映画における「ハッピー」の意味とは? 特集上映「ハッピー・ハマグチ・アワー」に寄せて

濱口竜介映画における「ハッピー」の意味とは

 彼女がとるこの倒錯的な手段は、どこか私たち観客の立場に似たものがある気がする。同時にその一方で、幽霊として生きる(?)少女の姿にも似たような共感を覚えもする。彼女は妹と会った(話した?)その日の帰り道、こんなようなことを言う。「私は雨に濡れない。雨は見えるし、雨の音も聞こえる。でも雨の匂いを嗅ぐことはない」。まさに映画の観客そのものの感想であるのような彼女のモノローグ。

 『天国はまだ遠い』は、目の前にありながらそれでもまだ遠い、スクリーンの向こうに広がる"映画"へのラブレターのような作品である。映画はそれでもまだ遠く、それでもまだ美しい。

■結城秀勇
1981年生まれ。映画批評。雑誌「nobody」編集部。同誌24号から36号まで編集長。共編著に『映画空間400選』(LIXIL出版)。

■上映情報
『HAPPY HAMAGUCHI HOUR! これまでとこれからの濱口竜介』
12月10日〜 ポレポレ東中野
12月17日〜 大阪シネ・ヌーヴォ
12月24日〜 神戸元町映画館
12月24日〜 京都立誠シネマ
公式サイト:https://hamaguchi.fictive.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる