『勇者ヨシヒコ』のパロディ表現はどこまで攻める? テレ東深夜ドラマの可能性

『勇者ヨシヒコ』がヒットドラマになった理由

 ヨシヒコたちはその中で一番弱そうなテレートを連れてニッテレン(日本テレビ)に戦いを挑むのだが、これが面白いのは、ただ名前をいじるだけのパロディではなく、視聴率三冠王の日本テレビと他のテレビ局との視聴率争いの戯画化になっていることだ。特にシエクスンの神様が会いに行ったら“すでに死んでいた”というのが一番笑ったのだが、このギャグ自体、それこそフジテレビ的で、全盛期のとんねるずがやるようなギャグだなぁと思った。

 福田雄一のドラマを見ている時に感じるある種の懐かしさは、80年代のフジテレビがやっていたコント・バラエティを、テレビドラマという形式を借りて今の時代に蘇らせている側面があるからだろう。80年代と今ではテレビ局の表現に対する規制は何倍も厳しいものとなっている。そのため、バラエティにおけるパロディ自体が年々難しくなっているのだが、福田雄一は深夜ドラマという枠組の中で作り続けることで、作り込んだコント・バラエティが持っていた面白さを発展させ続けている。

 根本にあるのが脱力的な笑いのために、あまり深読みしてもしょうがないとは思いながら油断して見ていると、今回の第五話みたいにびっくりするようなネタをガンガンぶち込んでくる。まったくもって油断できないドラマである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■番組情報
『勇者ヨシヒコと導かれし七人』
テレビ東京
毎週金曜深夜0時12分
出演:山田孝之、木南晴夏、ムロツヨシ、佐藤二朗、宅麻伸
監督・脚本:福田雄一
製作・著作:「勇者ヨシヒコと導かれし七人」製作委員会
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/yoshihiko3/

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