テレ東深夜ドラマ、“攻めた”作風の狙いは? 佐久間宣行P × 阿部真士P『刑事ダンス』インタビュー

佐久間宣行P&阿部真士Pインタビュー

佐久間「ネット配信の番組はまだ、収益化がぜんぜんできていません」

——実際にネットで配信をしてみると、M2、M3層が支えるテレビに対し、ネットは若年層が多いことは、数字に表れているものですか?

佐久間:番組によると思いますが、僕がやってるネット配信の番組は、若い人が多いです。ただ、現状は視聴無料で、15秒くらいのCMが入るだけなので、収益化がぜんぜんできていません。まだまだ声高に「テレビのネット配信をビジネスとしてこうしよう」と言えるレベルに達していないんですよ。視聴者があと3〜4倍いないと、ビジネスとしては成立しないと思います。今はまだ、地上波のCMモデルのほうがはるかに優秀なビジネスモデルなんですよ。嫌な言い方ですけど、配信でマネタイズの仕方と作りたいクリエイティブの両方をうまくクリアすることは、なかなか難しい。そのためにdTVで『ゴッドタン』のスピンオフを作ったり、Amazonプライムで一週間先行配信したりと、必死に試行錯誤中です。本当のところを言うと、アーカイブがきれいに整理されて、手軽に見られるようになっても、ユーザーの課金に対する抵抗感が、日本人は他の国の人よりも異常に高いんですよ。そこがクリアされれば、視聴者と制作者がいい関係になれると思ってはいます。

——YouTubeがあるからNetflixは利用しない、という人もけっこういます。

佐久間:音楽も一緒で、だから日本では、Spotifyの定額配信が先行国より7年くらい遅れたんでしょうね。多分、テレビも音楽も、最初に作ったビジネスモデルが日本では強固に守られているから、その分、変革に時間がかかって、世界の標準モデルに取り残されている状態です。そこそこ人口がいて、日本だけで食っていけるクリエイターが多いことが、海外に市場を広げないと食っていけない韓国の映画や音楽に負けている理由のひとつだと思います。テレビも一緒です。地上波のビジネスモデルで、社員の給料がギリギリ払えるくらいの時期が続いているから、変革しない。でも、いつまでも続くはずはないので、策を考えなければいけません。

阿部「アーカイブが埋もれているのはもったいない」

佐久間:もったいないなと思うのが、テレビに限らず、ちょっとおもしろいコンテンツがあっても、一過性で終わってしまって、なかなか届かないという状況です。アーカイブをもっと整えて、便利に使えるようにしてほしい。

ーー日本のテレビ番組のアーカイブが、きちんと整理されて手軽に見られるようになったら、ものすごく大きな財産になりそうです。

阿部:ですよね。NHKオンデマンドなんて、非常に便利ですよ。使い勝手も良いですし。向田邦子さんの『父の詫び状』が見たくて検索したら、ちゃんとありましたからね。

佐久間:ウェブも状況は同じで、ネットで作った番組も、それきりになってるんですね。昔、シオプロ(『ゴッドタン』などの制作会社)が作った、ネット配信用の番組も、面白かったからまた見たいんですけど、契約が切れると見られないそうです。

阿部:もったいないですよね。

ーーせっかくアーカイブがあっても活用されず、マネタイズもされず、埋もれている。

阿部:権利団体の在り方が、いろいろ複雑すぎるというのはあるかもしれないですね。役者も、音楽も。でも、配信に関しては、もうそろそろ法整備ができそうな感覚はありますけどね。

佐久間:「お金を払うから、俺らが作ったあの面白い番組をまとめて見られるようにしてよ!」って思ってます(笑)。

(取材・文=須永貴子)

■放送情報
土曜ドラマ24『潜入捜査アイドル・刑事ダンス』
テレビ番組ほか、10月8日より毎週土曜深夜0時20分~0時50分(全12回)放送
出演:中村蒼、大東駿介、横浜流星、森永悠希、立花裕大、青山美郷、福地桃子、野間口徹、近藤芳正
脚本:オークラ、土屋亮一、大井洋一
監督:住田崇、佐藤さやか
チーフプロデューサー:浅野太(テレビ東京)
プロデューサー:佐久間宣行(テレビ東京)、阿部真士(テレビ東京)、 熊谷理恵(ラフ・アット)
制作協力:ラフ・アット
製作著作:テレビ東京
公式サイト:http://www.tv-tokyo.co.jp/dekadance/

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